2020年に東京オリンピックを控えていることもあり、最近ではグローバルメディアの露出が目立ちます。ちなみに2015年の訪日外国人数は1,973万7,000人で過去最高を叩き出しました。
2016年に入ってからは毎月前年比18~31%増の推移値をマークしており、このままで推移していくと2020年の訪日外国人数は3,000万人を超えると予測されています。
つまり、日本に対する海外の注目度が高まっているということですね。リーチ数も日本の数倍以上なので、このチャンスを逃すなと多くのメディアがグローバル化しているのも頷けます。
しかし、日本のWebサイトがグローバルメディアとして成功するのはそう簡単ではないようです。
国内でライフレシピ共有メディア「nanapi」を運営している株式会社nanapiは日本のカルチャーやテクノロジーを発信する情報グローバルメディア「IGNITION」をリリースしています。しかしPV数は毎月平均1万PVに留まっており、この数字は海外で有名な日本情報メディアの平均PV数に比べると約1/10~1/30の数字です。(Similarweb調べ)
国内では月間数千万単位のPV数を誇っているメディアがグローバル化に苦戦していることからも、グローバルメディア運営の難しさが伺えます。
そこで本稿では、グローバルメディア運営のために大切なことは何なのか?そしてグローバルメディア運営初期で認知拡大のために実践したいことなどをまとめていきます。
今後グローバルメディア運営や、既存Webサイトのグローバル化を目指している方は是非参考にしてください。
SimilarWebとは:URLを入力することで競合サイトのPV数や流入経路などが分かるアクセス解析サービス。解析結果の正確性は100%ではありませんが、参考程度には十分活用できます。
グローバルメディア運営に大切なこと
まずはグローバルメディア運営に大切なことを確認していきましょう。どのようにしてPV数を伸ばすか?というよりも、メディアの運営体制自体に焦点を当てています。
日本語原文の最適化
グローバルメディア運営では、一般的に日本語原文を英語または複数の言語に翻訳して投稿するのが基本です。このため記事の品質や作業スピードを効率化するためには原文の最適化が何より重要になります。具体的には以下のようなことが実践できますね。
スラングを使用しない
スラングとは俗語や造語のことですが、翻訳するのが難しいケースが多いので使用しないのがベターです。皆さんも「チョベリグ」を英語にしてみろと言われても適切に翻訳できる方はいないと思います。
単純なものならある程度許容できますが、翻訳に難しいものは用いらないよう注意してください。
ややこしい文章構造を避ける
日本語は前後の文を入れ替えても意味が通じることが多いですが、「どの言葉がどこにかかっているか?」の判断が難しいこともあります。
例として「このスイカはとても甘くて美味しい」という文と「このとても甘くて美味しいスイカ」という文では同じことを言っているようでも、若干ニュアンスが違いますよね。
このニュアンスの違いが翻訳時にもろに出てしまい、コンテンツとしての質が下がる可能性もあるのです。
日本語独自の表現を極力なくす
日本語の表現というものはとても繊細で、同じような言葉でも様々なニュアンスを持たせることができますね。時に日本人であることに誇りを持つほどですが、翻訳が非常に難しい日本語独自の表現というものがあります。
例えば「もったいない」という言葉ですが、海外にも「もったいない」という概念はあってもそれを適切に表現できる言語が存在しないことが多いのです。
このように、日本語原文を最適化することで翻訳の質やスピードを劇的に向上させることができます。しかしこれらはあくまで一例なので、他にも日本語原文を最適化できる施策があればガンガン実践することが大切です。
翻訳レギュレーションの策定と継続的な改訂
グローバルメディアでは外部翻訳者を複数抱えていることが多いので、品質コントロールが難しい傾向にあります。特に複数言語で配信するメディアでは「言語ごとに翻訳内容が変わってしまう」という事態は避けなければなりません。
そこで大切なのが翻訳レギュレーションの策定です。
一般会話で使用するような言葉はさておき、流行語であったり日本にしか存在しない名詞などは「どう翻訳するか?」というレギュレーションが必須となります。
もう一つ大切なのは、レギュレーションを継続的に改定していくこと。策定したレギュレーションを「絶対ルール」として掲げていると、いずれ翻訳者から不満が出る可能性もあります。
つまり、レギュレーションは常に暫定的なものとして「改善すべきところがあればどんどん改訂していこう!」という姿勢でいることが大切です。
横断的なコミュニケーション
他言語翻訳で大変なのが、各翻訳者との横断的なコミュニケーションです。特に海外在住の翻訳者がいると時差の関係もあって円滑なコミュニケーションが取れない場合があるので、緊急性のある情報を共有できないなどの弊害が考えらえます。
クラウドグループウェアやチャットツールなどのコミュニケーションツールが必要となるでしょう。また、ファイル共有などにはオンラインストレージなども必要ですね。
以上3つは、グローバルメディアを運営していく上で絶対的に押さえておきたいポイントです。PV数云々よりも、運用体制がしっかりと取れていなければグローバルメディアで成功することはできないので、まずはしっかりと体制を築いていくことにウェイトを置きましょう。
グローバルメディア認知拡大のために実践したいこと
グローバルメディア運営でぶち当たる最初の壁は、メディアの認知拡大です。SEO対策をして検索結果上位に表示させるという施策はもちろんですが、あくまで長期施策なので運営初期のPV数確保も必要ですね。
そこで考えられる実践方法を以下にまとめておきます。
メディアにコンタクトを取る
海外では「NAVERまとめ」のようなキュレーションメディアが数多く存在し、常にネタ探しをしています。こういったメディアにコンタクトを取ることで自社グローバルメディアを認知してもらうと、編集がコンテンツをチェックしてくれるかもしれません。上手くコンテンツを取り扱ってくれればPV数確保に繋がり、そこからファンを作りだしていくことができますね。
また、海外の競合サイトの被リンク先を割り出し、掲載メディアにコンタクトを取るという方法もあります。
インフルエンサーにコンタクトを取る
インフルエンサーとはWeb上において影響力を持つ人物で、大体がブログや何かしらのメディアを運営していきます。日本で言えばYoutuberの「ヒカキン」などが該当しますね。
まずは海外のインフルエンサーに関するコンテンツや、インフルエンサーのブログを一部引用してコンテンツを作成しましょう。その後インフルエンサーに「あなたに関するコンテンツを作成しました」と連絡することで認知してもらいます。
これに対しインフルエンサーが何らかのレスポンスをくれれば、自社グローバルメディアを広く認知させることができるでしょう。
プラットフォームに登録
当然ですが、海外にもブログディレクトリサービスやブログランキングサービスといったプラットフォームが展開します。これらのプラットフォームに登録しておくことで、効率的にPV数を集めることが可能です。
また、国内でもポリュラーなFeedlyなどのRSSに登録しておくのも効果的です。
ソーシャルメディアを活用する
ソーシャルメディアの中でもビジネス向けのLinkedInやGoogle+にはグループ機能があります。実に多くのコミュニティーが形成されているので、自社グローバルメディアに適したグループに参加してコンテンツを告知するといいでしょう。
コンテンツに対するニーズが高いユーザーへ効率的にアピールできるので、バイラルを引き起こす可能性があります。
以上が考えられる施策ですが、海外にはキュレーションメディアやディレクトリサービスなんかが日本以上に存在します。数で言えば数倍以上なので、その分自社グローバルメディアをアピールできる場は数多くあるということです。
運営初期のPV数を集めるためには、できる限り全ての施策を実践することをおすすめします。
まとめ
最後に、今回の要点をまとめておきます。
≪運営について≫
- 独特の表現を使用しないなど、日本語原文を最適化することで翻訳の品質をスピードを向上させる
- 翻訳レギュレーションを策定し継続的に改訂していくことでコンテンツの品質コントロールを行う
- コミュニケーションツールを導入し翻訳者との横断的なコミュニケーションと情報共有を実現する
≪PV獲得について≫
- キュレーションメディアなどとコンタクトを取り自社グローバルメディアを認知してもらう
- インフルエンサーに関するコンテンツを作成しコンタクトを取る
- ディレクトリサービスなどのプラットフォームに登録してもらう
- ソーシャルメディアを活用してファンを集める
日本に対する注目度は年々高まっているので、グローバルメディアを展開すること自体は間違っていません。しかし、今後グローバルメディアをリリースする企業はその運営の難しさを理解していなければ、失敗に終わる可能性が高いでしょう。
第一に対応すべきは運営体制の整備であり、リリース後にPV獲得に向けて様々な施策を実践してみてください。また、いずれも無料でできる施策なので経理を圧迫することもありません。
グローバルメディアがハマればそれはもう絶大な効果を得ることができるので、ここで紹介したことを是非実践してください。
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