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カスタマーファーストとは? 重要性や実現のポイントを解説

商品・サービスの多様化が進む中、企業の製品を顧客から選んでもらうためには、「カスタマーファースト」を取り入れることが重要です。顧客を大切に考え、企業ではなく顧客の立場から考えて必要とされる商品・サービスを提供することが重要視されています。本記事では、カスタマーファーストの重要性や実現のポイントなどを解説します。

カスタマーファーストとは

「カスタマーファースト」とは、「顧客第一主義」や「お客様第一主義」のことです。顧客の立場になり、顧客の気持ちを最優先に考えた経営方法がカスタマーファーストと呼ばれます。顧客目線でのマーケティングや、商品・サービスの提供などを行うカスタマーファーストを実践することで、CX(カスタマーエクスペリエンス)や顧客満足度の向上につながります。

カスタマーファーストの重要性

現代では、商品やサービスの多様化が進んでいます。そのため、競合他社に埋もれず顧客から選ばれるには、顧客の立場になり、顧客のニーズに合う商品・サービスを提供することが大切です。

カスタマーファーストにより、企業が顧客の希望通りの商品やサービスを企画・提供できている場合、それらを購入・利用した顧客の満足度が向上します。顧客が自社の商品やサービスを利用し、その後のサービスまで満足できる体制を構築できていれば、CXの向上にもつながります。

なお、CXに関する詳しい内容は、以下の記事で確認できます。

カスタマーファーストを実現させるポイント

カスタマーファーストを実現させるには、いくつか押さえるべきポイントがあります。以下のポイントを念頭に置き、効果的に取り入れましょう。

全社的な意識の統一

カスタマーファーストの実現には、社内全体の意識を統一させることが重要です。

社内の意識が統一されていないと、従業員全員が協力して顧客のニーズに対応できる体制が整わないため、従業員ごとに顧客への対応に違いが生じかねず、カスタマーファーストの成功は難しくなります。そのため、直接顧客と接することがない経理などの部署も含め、全社的に顧客目線の対応を浸透させる必要があります。

カスタマーファーストの考え方を全社に浸透させるには、顧客の希望に応える、顧客中心の考え方を理念に掲げることが重要です。理念を各従業員の目に入るところに貼り出すなどして、全部署で理念を共有し意識統一を図りましょう。

対面におけるサービス品質の向上

顧客に満足してもらえるサービスの提供は、カスタマーファーストの実現に欠かせません。顧客が問い合わせなどのサービスを必要とする際に、便利で適切に対応できることが重要です。顧客対応を適切に行えるよう、コミュニケーション方法を複数準備して問い合わせ先を明記するなど、顧客が利用しやすい状況にしておきましょう。

コミュニケーション方法には、メール・電話・SNS・チャット・オンラインツールなどさまざまな選択肢があります。サービスを必要とする顧客に対して、必要なときに必要なサービスを提供できる体制を整えておくと、利便性の高さや信頼性の高さなどからサービスに対する評価が上がります。

顧客対応に当たる従業員に対してトレーニングや従業員教育を行い、接客スキルを高めることも重要です。接客時に必要となるマナーや、サービスに関する知識、ホスピタリティの習得などがサービス向上につながります。

年齢や性別、購入履歴などの顧客情報や、顧客の知りたい商品の在庫・納期などをすぐ確認できるようにしておくと、より顧客の希望に合う対応がしやすくなります。必要な情報をすぐに把握する方法としては、基幹システムERPとCXの連携があります。社内のデータを一元化しCXの最適化に活かす、CX側のデータを全社で活用するなどの連携により、サービス品質の向上が目指せます。

顧客の声に基づく商品開発

顧客の声からは、商品に関するニーズを発見することが可能です。そのため、顧客の声に基づいて製品開発を行うことが、カスタマーファーストにつながります。

顧客の意見を聞かず、社内の企画やアイディアだけをもとに製品を製造した場合、実際の市場のニーズに合わない製品が完成するケースもあるため、注意が必要です。利用者の声を集め、データを分析して製品の製造に活かすことで、顧客のニーズに合わせて製品を改良できます。

顧客の声を集める方法には、アンケートやモニター、ユーザーコミュニティ、SNS、レビュー、インタビューなどがあります。実店舗で商品・サービスの提供をしている場合や、顧客に営業担当者が対面する場合には、直接製品についてインタビューし要望を聞くことが可能です。確認したい内容がある場合には、事前に質問内容をまとめておき、応対時などに希望する点や問題点がないか、まとめておいた質問を聞いてみましょう。

インターネットやSNSで、プレゼント企画実施時にアンケートを行い情報収集する方法もあります。POSや決済システムとの連携により自動収集したデータを分析することも、顧客の声の効果的な活用方法です。

顧客情報や購入履歴など、具体的に数値化できる定量データを分析することで、顧客の属性やニーズを多角的な視点から把握できます。SNSやレビューなど、膨大な投稿データの分析も有効です。さまざまな顧客の声を活用することで、よりよい製品の完成につなげられます。

個人情報の真摯な取り扱い

近年ではサイバー攻撃が多様化していることもあり、データの流出・喪失への対策はより重要になっています。企業が個人情報をどのように取り扱っているかは、顧客からの信頼にも影響します。

個人情報は、マーケティングや顧客対応などに活用できる重要なデータです。ただし、企業が勝手に顧客から情報収集したり、保有している情報を外部に渡したりすることはできません。目的を明示して許可を得てからデータ収集し、適切にデータを管理する必要があります。

欧州で施行された「General Data Protection Regulation(GDRP)」をはじめ、世界中で個人情報の取り扱いに対する法規制が定められています。日本でも、2022年に「改正個人情報保護法」が施行されました。これにより、情報漏えい防止対策が中心だった法律に加え、個人の権利利益保護の強化、事業者への責務追加、法令違反に対するペナルティ強化などが盛り込まれました。

個人情報が適切に取り扱われていない場合や流出した場合には、厳しいペナルティが科されるだけでなく、顧客から企業のデータ管理体制に対して強い不信感を抱かれるリスクがあります。個人情報の取り扱いについては、各部署の顧客情報の同意管理および情報管理を確認し、改正内容に基づいて適切に対応しなければなりません。

【動画】マーケティング担当者必見!スタートアップCEOと考えるCXの未来

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デジタル技術の進化と共に購買プロセスが大きく変化し、B2B・B2C に関わらず、購買者はあらゆるタッチポイントで一貫したサービスを求めるようになりました。この変化の激しい時代において求められる顧客体験とはどのようなものか?

本動画は、過去 SAP.iO のプログラムに参加し、当領域の最前線で活躍されているスタートアップ各社の CEO をお招きし、日本企業が目指すべき将来の CX のあり方などについてディスカッションした内容を収録しています。

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カスタマーファーストに基づく組織づくり

カスタマーファーストを実現するには、取り組みに適した組織づくりに力を入れることが重要です。

部署間の連携強化

企業にはマーケティング・営業・製造・カスタマーサポートなど、さまざまな部署があります。カスタマーファーストを実現するには、社内の業務が異なる部署同士でも連携を取ることが重要です。

顧客に直接対応する営業部署やカスタマーサポートの場合、両方の部署でデータが共有されていると、顧客からの問い合わせに対して迅速に応じられるメリットがあります。たとえば、顧客が「購入したい商品についての情報を調べたい」とカスタマーサポートに問い合わせてきたケースでは、営業部に顧客の情報を共有してから対応を任せるなどの連携が可能です。

連携を取るためには、ツールを利用したデータの共有や、コミュニケーションの強化、協力体制の構築などが重要です。部署が異なるからとライバル意識を持つことなく、シームレスに連携できる関係性をつくりましょう。

トレーニングや教育の充実

先述したように、カスタマーファーストの実現にはサービス品質の向上も重要であり、それには接客に関する従業員のトレーニング・教育・研修の充実が不可欠です。顧客は、商品の購入前・購入時・アフターフォローなどの各段階で、従業員の対応によるサービスを受ける機会があります。CXは顧客が購入・利用する商品以外に、受けたサービスの内容にも左右されるため、質の高いサービスを実施しなければなりません。

サービスの質が悪いと、顧客には悪い体験の印象が残るため、CXや顧客満足度の低下につながります。対して、サービスの質が高ければ顧客に価値ある体験を提供できるため、CX・顧客満足度の向上が期待できます。

カスタマーファーストの未来像

AIやIoTなどのIT技術の発展により、今後はさまざまなデータをリアルタイムで収集し、データ分析に活用することが可能になります。AI予測や顧客情報を活用すると、各顧客が購入した商品の故障時期や、消耗品の買い替え時期などの把握も可能です。技術の活用により、適切なタイミングでメール配信などのアフターフォローを行えるため、顧客満足度やCXの向上に寄与します。

カスタマーファーストの考え方が企業全体に根付くことにより、顧客との良好な関係性の構築・維持につながり、ひいてはビジネスの長期的な継続・成長が見込めるでしょう。
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