マーケティング顧客データID管理

MA、SFA、CRMの違いと使い所

マーケティング担当者であればMAの存在はご存知のことでしょう。しかし、意外と多くの方々が「うちはSFA入れているからMAは必要ないよ!」など勘違いされているケースが目立ちます。

マーケティング・営業関連の代表的なITツールとして、MA(Marketing Automation)、SFA(Sales Force Automation)、CRM(Customer Relationship Management)という3つのカテゴリがあります。

それぞれは、コンセプトや特徴が違いますので、その違いと使い所を明確に理解できていないと正しい運用ができず、効果を最大限引き出すこともできません。本稿では今更人には聞けないMA、SFA、CRMの違いとその使い所について解説します。

MA、SFA、CRMの違い

MA(Marketing Automation):マーケティングプロセスの自動化

従来のマーケティングは担当者の勘や経験によって施策が展開されることが多く、部門間のデータ連携も薄かったため、言い方は悪いですが博打要素が強い傾向にありました。例えばたくさんの名刺情報を集めたいために展示会に出展しても、参加したことに満足してしまい効果測定は二の次になってしまうなどです。

本来であれば収集した名刺情報に対して、適切なアプローチで少しでも購買へと誘う活動が必要になります。いわゆるナーチャリング です。あるひとは商材の事例に興味があるかもしれません。また、あるひとはデモを見たいケースもあるでしょう。さらに購買意欲が増せば価格に興味を示します。

これらの案内を一人一人に対して人手を介して行うことは非現実的です。

MAはそうしたデジタル中心のマーケティングにおいて、従来人が手動で行ってきた領域と、人手では実現困難な領域での自動化を実現するITツールです。

たとえばあるユーザーがWebサイトに訪問した際に、そのユーザーの属性情報と行動履歴を収集し、リード(見込客)としての成熟度を判断することは人手では困難です。例えば価格ページを確認しているユーザーは、実際には見積もりが欲しいかもしれません。これをリアルタイムで営業が認知して連絡することはできません。数人程度のユーザーを追うだけなら簡単でしょうが、Webサイトに訪問するすべてのユーザーとなると事実上不可能でしょう。

現代ビジネスにおけるマーケティングはデジタルが中心であり、従来のマスマーケティングと違って全てが可視化できます。

こうした不可能を可能にするのがMAで、ユーザーの属性情報や行動履歴をIPアドレスと紐づけたりして、そのユーザーがリードとしてどれくらい成熟しているかを自動的に判断し、さらには特定の行動をトリガーにしてマーケティングを自動化することも可能になります。

MAによる完全に自動化されたアプローチで適切なタイミングで適切な情報をユーザーに届け、ニーズを成長させ、詳細のお問い合わせや営業への案件引き渡しといった利益に直結するアクションへと繋げていきます。

特に最近ではWebサイト等を活用した“インバウンドマーケティング”に取り組む企業が増えており、そこに訪れるユーザーへ如何にアプローチするかによって、ビジネスの成否が左右されるのでMAツールは必要不可欠と言っても過言ではありません。

SFA(Sales Force Automation):営業活動を効率良くサポート

SFAは文字通り営業担当者の活動をサポートするためのITツールです。ただし、そもそもSFAが市場に登場した背景には、営業担当者ごとに顧客情報が管理されブラックボックス化した管理環境に危機感を抱いたという経緯があります。

営業部門で蓄積される顧客情報は組織全体にとって大切な資産ですが、それを営業担当者ごとに管理されてしまうと、部署を移動したり離職した際にその資産を失うことになります。あるいはもっと単純に、顧客ニーズを深く理解するための機会を失っていることになります。

そうしたブラックボックス化した環境を打破すべく、営業担当者ごとに管理されていた顧客情報をシステムに入力させることで、組織の資産として蓄積することを目的に開発されたのがSFAです。もともとはそれに付随して営業活動の効率化という効果が発生していましたが、現在では顧客情報の蓄積よりも営業活動の効率化に重点を置いて提供されているSFAが増えています。

特に日本企業では営業日報を作成する習慣や、商談方法等が海外企業と異なるため、その商習慣に特化したSFAが多くやはり営業活動効率化という視点が中心になっています。SFAを導入するメリットとしては、営業担当者が抱える事務作業を軽減し、顧客情報や案件状況を部門全体で管理することで組織的なセールスに取り組み、部門としてベストプラクティスを蓄積していけることにあります。

CRM(Customer Relationship Management):顧客関係の観点から情報管理

CRMは単なる顧客情報データベースではなく、あくまで顧客と企業の関係構築と良好さの維持を目的にしたITツールです。

SFAは営業が主体に使うツールという位置付けですが、CRMは営業も使いますしコールセンターや購入後のお客様サポートも使うでしょう。要するに企業と顧客の接点における情報を管理することで顧客満足度やロイヤリティ向上であったり、ブランディング、アップセル・クロスセル、商品企画と言ったあらゆる分野で活用できる、それがCRMです。

顧客企業は旧来の10倍以上の情報武装する中で、ちょっとした対応のミスで顧客はすぐに離れてしまう時代です。これに対応するためには顧客企業の1社1社のニーズや状態を正確に把握し、各ニーズに沿った製品を製造したり、状態ごとのサービスを提供するといったパーソナライゼーションが重要課題であり、これを実現するためにCRMの活用が基本となっています。

このようにCRMでは製品やサービスの購入履歴、意見、クレーム、要望、保守サポート履歴といった情報を管理することで組織全体でその情報を活用します。

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MA、SFA、CRMそれぞれの使い所

ここまで解説したように、MAとSFA、それとCRMはそれぞれマーケティングに関連するITツールではありますが、そのコンセプトや機能は明確に異なることを理解いただけたかと思います。そのため各ITツールの使い所はおおきく違い、それを見極めて適切なITツールを導入することが大切です。その使い所について説明します。

MA:マーケティングプロセスを自動化して効率良くリードを創出したい

近年のMAはデジタルだけでなく、リアルでのマーケティング活動の情報も紐づけて管理することが可能です。たとえばセミナーや展示会といったイベントで収集した企業担当者の連絡先を総合管理し、かつIPアドレスを紐づけてリアルとデジタルを行き来したマーケティングが可能です。それによって企業のニーズを正しく把握したり、そのニーズを最大化することで効率良く質の高いリードを創出できます。

SFA:ブラックボックス化した顧客情報を統合管理し営業活動をサポートしたい

SFAは営業活動のサポートを中心とした機能を備えているものが多い中、ブラックボックス化した顧客情報を統合管理するという視点から活用することを忘れてはいけません。顧客情報は企業にとって重要な情報資産なので、これを適切に管理するためにSFAは欠かせない存在です。もちろん営業活動を効率化・見える化することも大きな目的の1つです。

CRM:あらゆる顧客情報を組織的に活用し顧客満足度の向上を目指したい

CRMは古くからあるITツールですが、単なる顧客データベースとして存在しているケースが多々あります。本来の目的は顧客との関係を構築したり維持するためのものであり、そこから顧客満足度を向上することで最終的に高い利益を得られます。MAとSFAに比べてより全社的な取り組みになるため、企業の戦略を見極めて慎重な導入と運用が成功のカギと言えるでしょう。

顧客のライフサイクル全体を管理できるツールを実現しよう

いかがでしょうか?今回はMA、SAF、CRMの違いと使い所について解説しましたが、各ITツールのいずれかを導入しましょうという話ではなく、大切なのは適宜ITツールを組み合わせて最適なシステム環境を構築することです。マーケティングの最適化と営業効率、それと顧客満足度向上というニーズを上手く融合してこそ真のエクセレントカンパニーになるのです。

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