先日、「Web担当者Forum ミーティング 2017 春」というイベントに時間があったので参加して来ました。私にとって何年かぶりのリアルイベントでした。
Webマーケティングの話題やトレンドをつかむのに貴重な機会だったと思いました。そこで今回は気になったセッションを受講してきましたので簡単にレポートしてみたいと思います。
マーケティングトレンド
こうした大型イベントで行われる各セッションを見ると、何がトレンドなのかが見えてきます。
今回のWeb担当者Forum ミーティングは「アナリティクス サミット 2017」という有料大型イベントとの併催でした。どちらに参加するか迷いましたが、最終的にWeb担当者Forum ミーティングを選んだため、アナリティクス サミットの方には参加できませんでした。
アナリティクス単独でこうした大型イベントが開催されるという事は、いかにデータがデジタルマーケティングで重要性を高めているか。あるいは企業がデータドリブンの動きになってきているかという表れと言えます。
さて参加したWeb担当者Forum ミーティングは、実に多彩な内容でした。
- コンテンツマーケティング
- オウンドメディア
- マーケティングオートメーション
- ヒートマップ
- SNS
- デジタル広告
以降は受講したセッションでの気づきをご紹介します。(メモ程度ですみません)
広告は多様化、断片化、そして自動化へ
■参加セッション:「運用型広告「広告効果が改善しない!」を突破する3つのアプローチ」
最初は株式会社オーリーズ代表、鈴木多聞氏による広告関連のセッションからです。広告の現状を次の三つに分けた説明から始まり、非常に理解しやすいものとなりました。
- 多様化
- 自動化
- 断片化
広告の多様化
多様化とは広告のさまざまな種類です。
検索連動型広告やリマーケティング広告、SNS広告など実にさまざまな種類がデジタルマーケティングの世界には存在します。
広告の断片化
断片化とはパソコンだけでなく、スマートフォンなどさまざまなインターネットに接続できる機器の登場が挙げられます。加えてWebページが多種多様になったのも、この断片化にあたります。
例えば以前の個人メディアといえばブログでしたが、今はFacebookにTwitter、Instagramなど実に多くのものが存在します。ブームとなるアプリが次々と出てくる事もあり、掲載面だけでも非常に広範囲に、複雑化しています。
広告の自動化
そして私が最も注目したのが、「自動化」です。リスティング広告ではGoogle AdWordsの「コンバージョン オプティマイザー」が例に出されました。
事例として挙げられたのは、次のようなケースです。
現状のCPAが2万円台なのをもっと下げれないか。具体的には半分ぐらいにして欲しいという要望がクライアントから出たため、コンバージョン オプティマイザーを使ってみたそうです。すると、ほぼ希望のCPAになるという結果が出たそうです。
このあたりについては人が懸命に運用するのでは到底できない事で、膨大なデータから瞬時に、効率の良い配信に切り替えるという自動化ならではの成果と言えたようです。
またCriteo(クリテオ)のアルゴリズムにより、すぐの購入予定がなかった層にもオンライン上でコンバージョンに至らせる率が高まるというのも、システムによる自動化を強く印象づける話でした。
AIというと囲碁や将棋のニュースが一般にも良く知られますが、現在は運用型広告でもその力は大きなものとなっています。
既に経験豊富な代理店や運用者も舌を巻くような働きが実現できているようなので、こうした自動化機能は大いに活用していくべきでしょう。
自動化と人の役割
ただし100%システムで成果を出せるかと言うと、そうではありません。
具体的に次の2点については、今後も人のノウハウが大いに生きていきそうです。
- 広告文の作成。
- 作成した広告文の取捨選択。
広告文の取捨選択については、広告機能でのA/Bテストも有効です。しかしキャンペーンや時期が限定されたものなど、それを行っていては追いつかないケースもあります。そうした場合は、広告主と複数の広告案からどれを出していくかを決める、というコミュニケーションが重要になりそうです。
なおここでの最大のメッセージは「ラストクリック(≒成果に直接結びついた接点)」だけで評価してはいけない、そのために広告主と代理店のCPAだけを意識した関係は止め、もっと密なコミュニケーションを持つべきというものでした。
SEO
■参加セッション:「”ユーザーと向き合う”オウンドメディアで月200万PVを実現したコツ」
こうした総合イベントで「SEO」とう言葉を見かける機会が減ってきました。もちろんその重要性が減っているのではありません。
むしろ増えているのですが、検索エンジンが進化しているためにそのアルゴリズムに追いつけず、従来の小手先のSEO程度では話が成り立たないという実情があります。
このセッションもタイトルにはSEOと付いていませんが、登壇した株式会社Faber CompanyはSEOツールの提供を行っている会社です。
ここではFaber Companyが提供する「MIERUCA(ミエルカ)」について少し解説したいと思います。
SEOツールという括りで紹介されるMIERUCAですが、検索順位のチェックや、Titleタグの記述、コンテンツ内のワードチェックなど初歩的なSEO対策ツールとは一線を画すものです。
キーワードやコンテンツの内容を分析し、どういった対策キーワードをうつべきか。必要なコンテンツはどういったものか。改善箇所はどこかなどを自動で導き出してくれます。
こうしたものは従来、SEOに関するしっかりとした知識と経験を持つ人が、一定の時間を割かないと出せないものでした。
しかしMIERUCAを使う事で、これが大いに短縮され、期待するデータが手に入ります。
このセッションの事例となったサイト「アソビュー」でもこれを導入した事で拡大、成長が加速できたそうです。Faber Companyは海外のイベントにも日本独自の技術を引っ提げ参加しています。
世の中にはこのようなツールがいくつか存在しますが、こうした革新的なツールを使い、旧態依然としたSEOから抜け出していきたいものです。ただし、すぐに陳腐化するのがこのSEOの世界の常ですので今は良くても常に最新を求め続けなければなりません。
マーケティングオートメーションとAI
■参加セッション:「顧客行動に合わせて最適なチャネルで最適なコンテンツをAI/機械学習+マーケティングオートメーションで届ける〜機械学習・ディープラーニングを活用して顧客行動・顧客嗜好を予測する〜」
この日は、複数のマーケティングオートメーションに関するセッションが行われていました。今なおMAに向けられる視線は熱いようです。
私が参加したのは株式会社アクティブコアの代表取締役、山田賢治氏のセッションでした。
自らも技術者というだけあり、機械学習に関する詳しい解説から始まりました。
機械学習が優れているとはいえデータが無ければできない事。あるいはデータには「購入データ」「訪問履歴」「クリック(など何らかのアクション)」といった種類があり、それにより機械学習の内容は変わるなど、専門的な事柄が分かりやすく解説されていきました。
またここでも、機械と人間それぞれが得意とする役割がある事が示されました。
具体的には、機械はデータの分析はできるもののどの項目を重視すれば良いかなどの重みづけはできない。そこは人間が行う必要がある、などです。
それがマーケティングオートメーションで必須の「スコアリング」へとつながっていくわけです。
例えばHubSpotでは、自動でスコアリングを行うPredictive Lead Scoreingという機能を提供していたります。
このセッションの後半では、具体的なマーケティングオートメーションのパターンや成果が出た事例なども紹介されていきました。
すっかり定着して、ツール導入も進んできたMAですが、国内ではまだまだ十分な活用ができておらず、成功事例もそれほど多くは報告されていません。
機械学習の集合体とも言えるMA自体が強力なパワーを秘めているのは間違いありませんので、理解を深めて活用を進めていきたいものです。
カスタマージャーニーマップ
■参加セッション:「事例で紹介する、カスタマージャーニーマップの落とし穴と回避方法」
クロージングセッションとして行われたのは、カスタマージャーニーマップに関するものでした。
「JEXIS(カスタマージャーニーマップ研究会)」を主宰する村山幹朗氏が失敗しがちな事柄と、それを回避するためにどういった形で作成していけば良いかを、丁寧に解説していきました。
カスタマージャーニーマップが失敗する理由として、次のような点が挙げられました。
- 作った時点で満足する。
- その活用法が分からない。
- 把握済みのユーザー行動が並んだだけで、新しい発見がなかった。
思い当たる方も多いのではないでしょうか。
実用的なカスタマージャーニーマップづくりとして、このセッションでは全体を集約させたものだけでなく、個別のカスタマージャーニーマップを作成する、という方法が紹介されました。
またマーケターは人の行動を「変化」させるのが役割。だからカスタマージャーニーマップで掴んだユーザー行動を変化させる事こそが本質、というのが最重要ポイントになります。
まとめ
この日のイベントでは「広告配信」「マーケティングオートメーション」など、機械学習により高いレベルで自動化できるものが増えたのが分かりました。
一方で「広告文」「データ項目の重みづけ」など、人が考えて実施する領域も見えてきました。
カスタマージャーニーマップを描いて「ユーザー行動を理解する」のも人が担う部分の一つですが、特にマーケターは「ユーザー行動を変化させる」という大きな役割を担うのも分かりました。
これについてはデジタルマーケティング全体にとっても非常に重要なポイントにもなりますので、カスタマージャーニーマップの描き方と合わせた実践的な記事として、改めて紹介したいと考えています。
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