マーケティング顧客体験(CX)

見た目よりも成果へ。失敗しないサイトリニューアルの5ステップ

インターネットが一般的に利用されるようになってから、ずっと存在している「サイトリニューアル」。どんなWebサイトでも一度作ったものが永久にそのままということはありません。多くの企業はこれまでに何度かのリニューアルを経験していることと思います。

ただし昨今のサイトリニューアルの目的は、大きく変わりました。

かつては「見た目、ビジュアル」の変更が主流でしたが、現在は「成果を出す」ことが強く求められるようになりました。

時代は「Webサイトがあれば良い」ということから「いかにWebサイトがビジネスに貢献するか」ということに大きくシフトしています。

しかし、多くの企業がサイトリニューアルにおいて、まだ昔のやり方を引きずっている、つまりデザインばかりに固執している、という光景をよく目にします。この傾向は長年マーケティングを実践していたプロであればあるほど強いようです。

この記事では失敗しないサイトリニューアルをしてもらうための内容をお届けします。

サイトリニューアルでよくある失敗の光景

実際のサイトリニューアルでどういったことが起きているか。まずはある事例を見てもらい、過去から続くリニューアルの流れを復習してみましょう。

デザインが気に入らない人たちが社内にいる

はじめに思わず笑ってしまう、しかし自分がその立場だったら泣けてしまうような例を紹介しましょう。

A株式会社が自社サイトのリニューアルをおこなったのは、数か月前のことでした。まだ、リニューアルしたばかりの状況です。

ところがWeb担当者は最近あたらしい制作会社を複数呼んで、話を聞いています。

制作会社:「少し前にリニューアルしていますよね。どうしてこんなにすぐ問合せをされているんですか」

A株式会社「はい。実は上の者たちが新しいデザインを気に入らないと申しておりまして・・・」

これには、大きく2つの問題があります。

一つはWebサイトをビジュアルだけで評価していることです。「好き、嫌い」と言った方がよりしっくりくるかもしれません。

もう一つは、こんなに早く再リニューアルになることです。

A株式会社はそれなりの規模でしたから、数か月前のリニューアルにかかったお金も決して安くはなかったはずです。

傍から聞くと笑い話のようですが、身につまされるWeb担当者もいるのではないでしょうか。こんな話は、割と頻繁にあるのです。

問い合わせが減ったり横ばいで成果が出ていない

もう一つ、リニューアルの失敗事例を紹介しましょう。

「Webサイトをリニューアルしました。しかし問合せ数が減ってしまいました」というものです。

これは成果を追っているのでA株式会社の例よりはずいぶんとマシですが、それでもリニューアルでマイナスになってしまったというのは大きな問題です。

マイナスにはなっていないけれど、リニューアルをした後の成果は横ばい、という例は多くあります。マイナスではないので良しとされることもありますが、お金と時間をかけて成果を伸ばせなかったというのは、やはり良いことではありません。

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これまでのリニューアルプロセスと問題点

これまでのサイトリニューアルのプロセスは、次のようなものでした。

  1. 要件をまとめる。それをもとにリニューアルの依頼をする
  2. デザイン画像ができて来る。何度かのやり取りの後、デザインをFIX
  3. 決まったデザインをコーディング。サーバーにテストアップする
  4. テストサイトを確認。修正や変更箇所を直してもらう
  5. 本場公開

対象となる企業やサイトの大小で加わる要素は他にもありますが、大きくはこのような流れです。かなり「モノづくり」に特化しているのがわかります。

こうしたサイトリニューアル方法は、古いものになりつつあります。

しかし全体で見ると、まだ多く行われている印象です。

こうした「サイト制作≒モノづくり」というプロセスだと、見た目だけに偏ったサイトリニューアルになりがちです。それにステークホルダーが多い企業だと、その見た目さえも気に入らないという意見が次から次へと出てきて、先ほどの例のように早々にリニューアルという流れになりかねません。

デジタルの世界は変化が激しく、ご承知のとおりデジタルマーケティングはかなり進化しています。たとえばターゲティングが手軽に自動化されるなどは、つい数年間までは考えられませんでした。また大なり小なりAIも実用化されてきています。

またWebサイトの制作現場も大きく変化しています。ひと昔前の常識だとDreamweaverだ、jQueryだというのがありましたが、それはもう昔話です。

これらを考えると、サイトリニューアルの現場だけが大きく進歩から取り残されていると言えるでしょう。

リニューアルで取組むべき5つのポイント

こうした遅れを取り戻すための、サイトリニューアルで取組んでいきたい5つのポイントを紹介していきます。

検証/目的を明確化

アクセス解析はほとんどのサイトで導入されています。しかしサイトリニューアルの際にそれが十分に活用されているとは、言い難い状況です。

リニューアル企画の段階でサイトの課題はピックアップされてくるものの、非常に感覚的です。

日々のサイト運営に携わっている方の問題意識なので大外れしていることは少ないですが、感覚だけだと「どこにマイナス要因があるか」が見えてきません。

たとえばあるサイトの課題が、「一人あたりのページ閲覧数がわずか1.5ページしか無い」だとします。しかしアクセス解析を深く見ないと、要因にまでたどり着けません。

分析を進めるとトップページから会社概要に多く遷移していて、そこで離脱が多く起こっていたとします。会社概要は必ず設置すべきでユーザーも一番に気にしているものの、現状はマイナス要因のコンテンツになっていると想像されます。会社概要ページの滞在時間なども見て、さらに裏付けを取っていくと良いでしょう。

感覚だけに依らない、データに基づくリニューアルを目指していきたいものです。

ユーザーファースト

言葉は知っていてもなかなか実行できていない、それがユーザーファーストです。

最たるものはユーザー目線ではなく企業、あるいは企業にいる個人目線でサイトの良し悪しを判断していくという風潮です。

誰しもデザインの好き、嫌いはあります。またWeb担当者自身が触ってみてここが操作しづらい、といった場面にも出くわすでしょう。

しかしそれはすべて、企業ファーストでの評価です。

ユーザーファーストで進めていくために、ペルソナの設定をしましょう。

「誰にとって有益なコンテンツなのか。誰が操作しやすいように作るべきか」がわかるようになります。

ただ最近は、年齢や性別、それにちょっとしたニーズを加えただけのものをペルソナとしてサイトリニューアルに臨んでいるケースも目立ちます。

「50代の男性、健康器具をよく探している」といった感じです。これだとユーザーの具体的な姿が、まったく思い浮かびません。後半部分はただ企業がこんなユーザーだったら興味を持ってもらえる、という願望でしかありません。

ペルソナは「関係者がユーザー像を共有する」「ユーザーの姿をありありとイメージできるようになる」ためのものです。

また企業の願望や想像でなく、データに基づいて作り上げていくというのも大切です。

これによりサイトの評価を常にペルソナの目線でできます。

またサイト内でのコンバージョン後のシナリオについても、ペルソナを主役に組み立てていけます。

マーケティング施策

過去からのサイトリニューアルで「リニューアルをしたのに、PVが増えない」という言葉を何度聞いたことでしょう。

リニューアルをするだけでは集客は伸びない、というのは分かってきたはずですが、今でもこうした不満はよく聞かれます。

Webサイトを作り直すだけで集客が伸びることはありません。

何らかのマーケティング施策を行っていく必要があります。また「Webサイトにユーザーを集める」ことに加え、「Webサイトを起点にしてユーザーを成果に導いていく」というマーケティング戦略も、当然必要になっています。

たとえばリニューアルとセットでマーケティングオートメーションを導入する、コンテンツマーケティングを実施するなど本格的に取り組んでいくことを考えると良いでしょう。

ビジネスの実態反映

この項目が、一番大切なポイントです。

成果を上げることを主目的にするならば、自社のビジネスについてよく理解して、最適な形でWebサイトへ反映させなければいけません。

意外とWeb部門では、それができていないケースがあります。理由は、下記のようにさまざまです。

  • Web部門がシステムやデザイン寄りで、自社のビジネスをあまり理解していない
  • Web部門が自社ビジネスを理解していないから現場の意見に右往左往してデザインに逃げてしまう
  • デジタルマーケティングには取組んでいるものの、現場の実態とかけ離れる
  • 現場がWebと実際のビジネスは別物と考えていて交流がない
  • 企業がWebにそれほど価値を感じていない

など

多くが、ビジネスの現場とのコミュニケーション不足から起きていることです。

サイトリニューアルを、現場との接点づくり、関係強化のキッカケとするのをオススメします。

企業内のWeb担当者は、一般的なデザイン手法やデジタルマーケティングの知識よりも、自社のビジネスに対する理解と内部での調整能力が必要とされます。

ABテスト

ページやコンテンツを公開して、実際にユーザー自身に判断してもらうABテストが、サイトリニューアルでは重要になります。

具体的な例を挙げてみましょう。

ある大型サイトのリニューアルでは、ペルソナやシナリオを検討したあと、それをもとにしたコンテンツの企画をつくり、表現パターンを複数用意してABテストを繰り返しました。

そして勝ちパターンをつかんできてようやく、フルリニューアルとなりました。

どこまで深く綿密に考えても、ユーザーは意図しない反応を返してくるものです。実際にユーザーに問いかける方法がWebでは可能なのですから、それを大いに利用していくべきです。

メッセージやコンテンツの重要性

ご紹介してきたようにデザインよりも重要なことがたくさんあります。昨今のWebサイトリニューアルはカタログを作成するような昔ながらのやり方は通用しません。

モバイルアクセスも相当数増えています。小さなモバイルの画面の中でユーザーが求めるのはデザインではなくコンテンツやメッセージに他なりません。もちろんデザインも重要ですが、ここでいうデザインは見た目よりも操作性の方であったりします。

目的を明確化してペルソナはしっかりととらえ、そのペルソナが求めるコンテンツの提供こそがWebサイトリニューアルには重要なのです。

もちろん、最初から完璧なWebサイトリニューアルは難しいものです。そのためには新たなWebサイトへの接し方である「グロースドリブンデザイン」という考え方が必要になってきます。

まとめ

今回5つのポイントにまとめましたが、この他にも「プロトタイプで遷移を検証する」「運用方法を洗い出す、見直す」など、リニューアルの成功確率を高めるためのポイントはいくつもあります。

加えて、全面的なリニューアルが絶対に必要かも考えてみると良いでしょう。

もちろん「スマホ対応が十分でない」「画面幅が狭い」といった技術的な改修が必要な場合や、「企業のブランドイメージが古くなっているので一新したい」といったビジネス全体の変化のために、フルリニューアルが有効なことも多くあります。

しかし現状はまずまず、さらに成果を出していきたいといった時は、その目的に絞った改修を加えていくのも良い方法です。「グロースドリブンデザイン」は、目的に対してより確実にアプローチできる方法です。

リニューアルはあくまでも手段です。ビジネスを成長させていくことがWebサイトの役割となっている今、それに合う方法を選択することも大切です。

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