アドビの調査結果から考えるコンテンツマーケティング担当者が意識するべきこと

 2021.10.28  2023.02.03

アドビは、Photoshop、Illustratorといった定番ソフトウェアなどで有名ですがUX / UIデザインソフトウェアであるAdobe XDの力の入れ方からもわかるようにユーザー体験にも非常に力を入れていることは有名な話です。

2019年3月、アドビは消費者のコンテンツに関する意識調査「2019 Adobe Consumer Content Survey」を行いその結果を発表しています。この調査は、デジタルデバイス(スマートフォン、タブレット、PCなど)を1台以上所有する18歳以上のユーザーを対象として実施され、日本国内では1,004人が回答しました。

ユーザー体験に関りが深い内容になっていますので、その結果をもとにインバウンドマーケティングやコンテンツマーケティング、オウンドメディアを運営する担当者が知っておくべき内容についてご紹介したいと思います。

年代別のユーザー行動について

コンテンツはユーザー体験にとって非常に重要なものです。UX/UIという言葉が一人歩きしてしまいUIこそが重要、と考える人もいますが、コンテンツの充実がなければ、たとえUIだけを極限まで高めてもユーザーはついてはきてくれません。

アドビは非常に興味深い報告を出しました。

「コンテンツ消費あたりに一日にデバイスを利用する時間」、つまり「一日にどれくらいデジタルコンテンツを閲覧しているのか」です。

全体の平均は4.8時間でした。

年代別のユーザー行動

 

1日24時間、睡眠などを除いた実際の活動時間は15時間と仮定すると実に1/3の時間をデジタルコンテンツ閲覧に費やしているそうです。

また、年代別では「18歳から34歳:6.0時間」。やはり若年世代が多いというのは想像通りです。

高齢者もデジタルデバイスも使うということは今や常識ということはわかっていましたが、閲覧時間が少ないのは65歳以上ではなく50歳から64歳の層だったこと。

50歳代に多い最終決済を行うであろう役職者はデジタルコンテンツを見ないのか?自分は65歳を超えたらどのようなWebサイトを見るのだろう?などと色々なことを想像してしまいますね。

複数デバイス

「複数デバイスを使用しているか否か」という問いは、年齢の高さに反比例する結果に。これは移動の多さなどを考えると妥当といえるでしょう。

Googleアナリティクスではクロスデバイスレポートを簡単に見ることができますが、多くのWeb担当者から「クロスデバイスは思ったよりされていないんですね」という声が聞かれます。私たちが実際に見ているGoogleアナリティクスのデータでも、クロスデバイスの率が高いというものは見当たりません。

ただし、今回の調査結果では表現されていませんが、デバイスの内訳には今後は注意が必要と言えるでしょう。最近では、実際にBtoBサイトにおいてもスマートフォンからのアクセスが急増しています。

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コンテンツへの不満。イライラ、不快に感じることは?

さていよいよこの調査を取り上げたいと考えるきっかけになった、コンテンツに関する二つの質問と回答内容を紹介します。

  • コンテンツを探している際にイライラすること
  • コンテンツで最も不快に感じること

です。

コンテンツを探している際にイライラすることとは?

まずはコンテンツを探している際、つまり目当てのものに行き着くまでにイライラしてしまう理由です。

コンテンツ

 

これについては上位三つがほぼ同じ割合でした。

  1. コンテンツを見つけるまでにページやスクリーンをたくさん見る必要がある
  2. 関係のないオファーを受ける
  3. ページの読み込みが遅い

です。

32%と数字的には3位ですが、レポートでは「ページの読み込みが遅い」にフォーカスしたコメントが掲載されていました。理由として18歳から34歳でこの項目をあげる割合が極めて高かったということで「時間がかかりすぎると閲覧を完全に止める」という回答が多くあったそうです。

ページの読み込みスピードはモバイルファーストインデックスを開始したGoogleも「主要なランキング要因の一つ」としてあげています。PageSpeed Insightsというツールの強化、紹介にも力を入れていることから、どれだけ重要視しているかがわかります。「Googleが重要視している≒ユーザーが強く望んでいる」ことですから、この調査結果は妥当といえるでしょう。

コンテンツを見つけるまでにページやスクリーンをたくさん見る必要がある」はパソコンを意識した作り、情報設計がうまくできていないことから引き起こされていそうです。またページ遷移が多いのは企業側がたくさんの情報を見せたい、という事業視点重視のサイトでもよく見られます。メディアの場合にはページビューを稼ぎたいためにページ送りを沢山入れることもあるでしょう。Web担当者はさまざまなプレッシャーにさらされることが多いでしょうが、いかにシンプルにページを作成するのかが重要と言えるでしょう。

また、コンテンツからコンバージョンへの誘導が意識され始めたことから「関係のないオファーを受ける」という不満は高くなっているのかもしれません。静的なリンクボタンだけでなくパーソナライズされたリンクやCTA、チャットやブラウザプッシュ、ポップアップなどがただ闇雲に出されることは、かなりのイライラを募らせるようです。トップ3からわずかの差で外れた「関係の無いオススメやコンテンツを受け取る」も、これに似た不満といえます。

記事コンテンツの定番のつくりとして「関連する記事」などのリンクが置かれます。サイトの運営、コンテンツ編集者は意外とここには注力していないケースが見受けられますが、ユーザーはきちんとこうした部分も見て評価しているというのは忘れないようにしたいものです。

こうした関連性への配慮は、コンバージョンポイントがコンテンツ内容に関係あるものかどうか、という点についても同じことがいえます。

コンテンツで最も不快に感じることは?

次に「コンテンツで最も不快に感じること」という方を見ていきましょう。

コンテンツで最も不快に感じることは?

断トツで一位になったのが、「だらだらと長い/文章が下手」です。

これは企業の商品やECサイトなどの調査で要望の一位に「価格をもっと安くしてほしい」がくるのと似た結果にも見えます。つまり一位になって当然というものですが、43%と半数近くの人が不快に感じているということは、そうしたコンテンツが多いということなのでしょう。

インターネットの記事コンテンツは、編集がきちんとされていないので読みにくいというケースが多々あります。またSEOを意識して文字数を闇雲に多くしているものも目立ちます。このあたりがユーザーの不満となって表れているのでしょう。

1%というわずかな差しかない2位の「パーソナライズされ過ぎていて気持ちが悪い」、3位の「自分自身や置かれている状況に関連性がない」は、相反する不満で悩ましいところです。

ユーザーがパーソナライズされた自分にピッタリのコンテンツが出ていて、「自分の情報、好みが筒抜けになっているのではないか」と不安を覚えるのは理解できます。しかしそれができていないと、それはそれで不満というわけです。

具体的な手法としてCookieを使ってのコンテンツ出し分けがありますが、GDPRにより個人情報として規制、ITPで技術的なブロックがされるなどプライバシー保護が強化されています。一方でデジタルマーケティングとしてはCookieを使った出し分けは欠かせない手法です。

ビジネスではこの二つがせめぎ合っているわけですが、この調査結果の2位、3位は期せずしてこうした状況を反映しているといえます。

もう一つ不満として高かったのが「自分のデバイスに最適化されていない」です。

モバイルファーストインデックスでかなり対策が進んでいますが、中にはパソコンのページがそのまま表示され読みづらいコンテンツもまだ多く目にします。この点はに関しては企業は早急に取り組むべきでしょう。

また今後はネットに接続する機器がいっそう多様になる、IoTがいっそう加速していきます。デバイスを問わず最適な形のコンテンツを提供する、というのはWeb制作の大きなテーマになります。

その他の結果

今回はこのレポートで言及されておりますその他の結果に関しては別の機会に取り上げたいと思います。

ちなみに他にも「これらの不満がブランドや製品の購入にどう影響するか」についても言及されています。定量データとして「ブランド企業のWebにおける最近の体験はどうでしたか」「ブランド企業から関連性のない、パーソナライズされていないコンテンツを受取っていますか」「ブランド企業からパーソナライズされたコンテンツを受取った時の行動について」という、企業とユーザーの具体的な体験に関するデータもレポート内には掲載されています。

またコメントとして、動画コンテンツへの言及もあります。動画コンテンツはユーザーにとって当たり前のものになっており、Google検索でも重要性がますます高まっています。こうした調査データをもとに、ユーザーが何を動画コンテンツに求めているかを理解して導入を進めていくと、より効果的なものを作り上げることができるでしょう。

まとめ

調査データは「ユーザーの意見を客観的に把握できる」という点で非常に有効です。今回紹介したアドビのデータは、コンテンツマーケティングに取組むうえで重要な指針が数多くあります。ぜひ実際の調査データにアクセスして、自身のコンテンツづくりの参考としてください。

出典:アドビ、日本人のデジタルコンテンツ消費に関する5つのトレンドを発表(Adobe)

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