マーケティング顧客体験(CX)

パーソナライゼーションはなぜ重要? メリット・事例・おすすめのツール

価値観の多様化が進む昨今、有効なマーケティング手法としてパーソナライゼーションに注目が集まっています。パーソナライゼーションとはどのようなものか、なぜ重要視されているのかといった基本的な情報から、カスタマイゼーションとの違い、活用することにより得られる効果やメリット、実施する際の注意点など、網羅的に解説します。

パーソナライゼーションとは顧客一人ひとりに対して最適な提案を選定する手法

パーソナライゼーション(Personalization)とは、直訳すると「個人の用途に合わせる」という意味です。

マーケティングにおいては、顧客の属性や行動履歴などのデータを活用して、顧客一人ひとりのニーズに最適化した商品やサービスを企業が提供する手法を指します。顧客満足度を上げコンバージョン率を高めるだけでなく、顧客ロイヤルティを高めて長期的な関係を構築することが、パーソナライゼーションの目的です。

カスタマイゼーションとの違いは?

カスタマイゼーションとは、顧客が自ら、自分の好みにそって商品やサービスを選択することを指します。

結果的に顧客が好みの商品・サービスを得られるという点では一致しますが、パーソナライゼーションは企業目線で顧客へ提供するものを選ぶ手法であり、実施する人や目的が異なります。

【動画】マーケティング担当者必見!スタートアップCEOと考えるCXの未来

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デジタル技術の進化と共に購買プロセスが大きく変化し、B2B・B2C に関わらず、購買者はあらゆるタッチポイントで一貫したサービスを求めるようになりました。この変化の激しい時代において求められる顧客体験とはどのようなものか?

本動画は、過去 SAP.iO のプログラムに参加し、当領域の最前線で活躍されているスタートアップ各社の CEO をお招きし、日本企業が目指すべき将来の CX のあり方などについてディスカッションした内容を収録しています。

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パーソナライゼーションが重要視される理由

パーソナライゼーションはインターネットの普及に伴って重要性が高まり、現在では様々な企業に導入されています。重要視される理由について、3つのポイントを挙げて解説します。

顧客の多様化

インターネットの普及により、人々は多種多様な情報に触れられるようになりました。その結果、様々な価値観が生まれ、多様な属性を持つ個人を尊重する風土も醸成されています。

価値観とともに顧客ニーズも多様化しており、単一の価値を提供するだけではコンバージョンにつなげることが難しくなりました。情報があふれニーズの複雑化が進む中で、顧客一人ひとりの体験を重視することが求められています。

顧客体験とは、顧客が商品やサービスの情報に触れ、それを利用するまでの一連の体験をいい、場合によってはアフターサービスも含みます。自分に合った情報が提供され、スムーズに商品やサービスを利用でき、必要なサポートを受けられた顧客は、リピーターになる可能性が高まります。

このような上質な顧客体験を提供するためには、パーソナライゼーションが役立ちます。顧客の多様化に対応し、顧客体験を向上させることが求められるようになった近年、顧客の分析を通してニーズに最適化した対応ができるパーソナライゼーションの重要性が高まっています。

プロモーションの多様化

テレビと新聞しかメディアがなかった時代には、マスマーケティングにより高い効果を得られました。しかし、パソコンやスマホの利用者が増え、一人ひとりが見たいものを選べるようになった今日では、同じ効果を期待することはできません。

インターネットの普及により、Web広告・SNS・SEOなど、多様なプロモーション方法が実現しています。企業が提供する情報だけでなく、商品やサービスを利用した顧客自身がSNSなどを使って情報を発信するようになり、顧客は膨大な量の情報を得られるようになりました。同時に、顧客は情報を取捨選択し、自分に必要なものを見つけ出すことが求められます。

このように、顧客の得る情報があふれている状況では、個人の検索結果や購入履歴を分析し、おすすめの商品を紹介するといった顧客に合わせたプロモーション手法が効果的とされています。

従来型マーケティングの限界

架空の顧客モデルであるペルソナを設定してカスタマージャーニーを作成するような従来型のマーケティングは、パーソナライゼーションと異なり、リアルな顧客をアプローチ対象としていません。多数の顧客から得られる断片化したデータをもとに、ペルソナの行動や感情を仮定して作成するカスタマージャーニーは、実際の顧客像と乖離してしまうリスクがあります。また、作成に多数の工程を要するうえ、分析のベースが架空の存在であるため、事前に効果を予測するのは困難です。

各顧客のニーズに個別対応ができないという従来型のマーケティングの限界が、顧客に個別対応できるパーソナライゼーションへ注目が集まるようになった理由のひとつです。

パーソナライゼーションのメリット・効果

情報があふれる中、価値観の多様化した顧客に対して効果的なマーケティングを行うためには、パーソナライズが重要な要素となります。パーソナライゼーションがもたらすメリットについて代表的なものを解説します。

効率的なマーケティング

パーソナライゼーションによって、その商品を必要だと思う人へピンポイントに情報を届けられるので、効率的にマーケティングを行えます。ツールを導入すれば自動的にパーソナライズを行えるので、顧客のニーズに合った商品やサービスを、スムーズに受け入れられやすい方法とタイミングで紹介できます。自分のためだけに最適化された上質な顧客体験は、顧客満足度を高め、コンバージョン率の向上にもつながるでしょう。

潜在顧客の獲得

顧客を分析し、個別に最適化した情報の提供ができるので、顧客自身も気づいていない潜在的なニーズの掘り起こしが期待できます。購入履歴を分析しておすすめの商品情報を提供するレコメンド機能が代表的な例です。顧客の潜在的なニーズを満たすことは、顧客満足度を高め、顧客と長期的な関係を築くことにもつながるでしょう。

顧客が求めているであろう商品やサービスを分析し提案できるパーソナライゼーションは、ニーズはあるのに自社の製品との接点がなかった層へのアプローチを可能にします。これまで接点のなかったニーズへアクセスする経路を獲得し、ニーズの掘り起こしと顧客接点の強化により、自社のターゲット拡大を図れます。

既存顧客との信頼関係の構築

パーソナライゼーションでは、顧客を大衆として一括りにせず、個別に最適化した情報を提供します。個人として認められた顧客は、適切な情報を入手して満足感を得られるので、企業に対する信頼感が高まっていきます。顧客と長期的な関係を築き、継続して商品やサービスを利用してもらうために、パーソナライゼーションがもたらす顧客との信頼関係の構築は重要です。

パーソナライゼーションで必要なデータ

パーソナライゼーションを行うためには、顧客に関する情報の分析が欠かせません。消費者にとって好ましいタイミングを把握し、必要な商品やサービスを提供するために必要となる、3つのデータについて解説します。

デモグラフィック(消費者の属性)

デモグラフィックは、顧客の年齢や性別などの属性を表す人口統計学的なデータです。顧客のグルーピングなどに使われ、傾向を把握するのに役立ちます。デモグラフィックを得るためには会員登録時などに、必要な項目を設定したフォーマットへ入力してもらうのが一般的です。他にも、サービスをSNSと連携することで、連携先に登録されている情報を間接的に入手する方法があります。

ビヘイビア(行動データ)

ビヘイビアは行動という意味を持つ言葉です。このデータには、顧客のサイト閲覧履歴やアクセス経路のデータといった、ユーザーの行動履歴が含まれます。インターネットやWebメディアを活用することで容易に収集が可能です。リピート率・滞在時間・閲覧ページ数・流入経路・コンバージョンルートといったビヘイビアを分析することで、顧客それぞれに合ったアプローチ方法が見えてきます。パーソナライゼーションを行う上では、重要度の高いデータです。

コンテキストデータ(消費者の背景情報)

コンテキストデータは、消費者の背景情報を意味します。顧客が使用するデバイスの種類や、サービスを利用する時間帯、住んでいる地域といった、顧客行動の土台となる情報です。コンテキストデータを分析することで、顧客の目につきやすいタイミングを狙って、顧客がアクセスしやすい形式で情報を届けられるようになります。

パーソナライゼーションを実施する上での注意点4つ

パーソナライゼーションを実施する上では、注意すべきポイントがあります。信頼を失ったり、顧客の好感度を下げたりしないために、しっかり確認しておきましょう。

個人情報の取り扱い

パーソナライゼーションは多くの個人情報を取り扱うため、扱いに細心の注意を払うことが求められます。情報漏洩が起こらないような管理体制の整備や強固なセキュリティの構築が必要です。

EU域内に子会社や営業所を持つ企業や、日本国内からEU域内に対して商品やサービスを提供している企業、EU域内に住む顧客の個人情報を取り扱う企業などは、GDPRの適用を受けるので注意しましょう。GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)は、2018年5月25日に施行されたEU域内の個人データを保護する規定です。

GDPRで保護対象となる個人情報には、顧客名やメールアドレスだけでなく、画像や音声などの幅広いデータが含まれ、データを取得する際は事前に承諾を得ることが義務付けられています。

パーソナライゼーションを行う際に活用されてきたCookieについて、日本でも2019年から規制に向けた動きが見られるようになりました。ビジネスのグローバル化が進み、顧客が日本国内にとどまらない昨今、国際的な個人情報保護の動きには継続して注意が必要です。

提供情報の偏り

顧客に最適化した情報を提供できることはパーソナライゼーションの利点ですが、提供する情報が限定的なものになる恐れがあります。一時的には顧客が求めていたものであっても、同じような情報ばかりだと思われ、倦厭されるのは望ましくありません。

また、古い情報を参照していると好みの変化に対応できず、顧客にとって不要な情報ばかりを提供することになります。

潜在的なニーズを引き出すためにも、提供する情報が偏りすぎていないか検討することが重要です。

自社製品への深い理解

パーソナライゼーションは多様な商品やサービスの中から顧客に合ったものを選ぶことを前提としているため、最適化のしようがないほどに商品やサービスの数が少ないときには、あまり効果が期待できません。自社製品のターゲットや特長を深く理解して、パーソナライゼーションが適しているのか検討することが大切です。

自社製品をどう使ってほしいかだけでなく、実際にどう使われ、顧客が何を求めて手にするのかを理解しましょう。その上で必要とする顧客にピンポイントでアプローチすることは、競合他社が多い場合には特に重要です。

定期的な設定の見直し

高度な情報化やグローバル化の進んだ現代は、変化の激しい時代です。市場の環境もうつろいやすいので、常に最新の情報を得られるようアンテナを張り、柔軟に対応していくことが求められます。パーソナライゼーションを行う上でも、変化への対応は重要です。一度設定したら終わりというのでは、高い効果が期待できません。顧客満足度を高く保ち、成果を上げ続けるためには、状況は変化するという前提に立って、定期的に設定を見直すことが大切です。

【SAP Emarsys Customer Engagement】パーソナライゼーションを実現する次世代型プラットフォーム

「SAP Emarsys Customer Engagement」は、グローバルにビジネスを展開しているSAPが提供するカスタマーエンゲージメントプラットフォームです。パーソナライゼーションの実現に役立つSAP Emarsys Customer Engagementの特長を詳しく解説します。

オムニチャネルでのAIによるパーソナライゼーション

SAP Emarsys Customer Engagementは、AIを活用してひとつの媒体で顧客をつかみ、オムニチャネルマーケティングへ展開します。オムニチャネルとは、複数ある顧客との接点を統合して管理し、顧客へアプローチする方法をいいます。オムニチャネルを活用すると、顧客のデータを総合的に集められるため、効果的な分析や、客に対する最適なアプローチができ、顧客満足度の向上や機会損失の減少につながるというメリットがあります。

SAP Emarsys Customer Engagementは、「予測」「コンテンツ」「タイミング」「チャネル」のステップごとにAIがパーソナライゼーションを自動で実施し、効果的なコンテンツをよりよいタイミングで、適切な方法で顧客へ届けることが可能です。AIが行う深い分析により、変化する顧客のニーズにも柔軟に対応できるので、コンバージョン率の向上が期待できます。

たった4ステップの圧倒的なスピードで施策可能

SAP Emarsys Customer Engagementは、「目的の設定」「戦術の選択」「スケジュールのセット」「コンテンツのセット」というたったの4ステップで、目標達成のために最適な施策を実行できます。スピーディーな施策の実行を可能とするのは、体系化された72の戦術と、AIのパーソナライゼーションによるものです。

目的に合わせた戦術を選択するだけで必要なキャンペーンフローが自動で生成され、配信するユーザーはAIが抽出してくれます。分析してキャンペーンシナリオを作成し、セグメンテーションを行ってユーザーと配信チャネルを選択するといった、個別に行うと時間がかかる複雑な工程が、SAP Emarsys Customer Engagementを活用すると、迅速かつ効果的に行えるようになります。

世界ですでに2000社以上が導入

SAP Emarsys Customer Engagementは、BtoC中心の企業や中堅規模の企業での採用が加速しており、国を問わず多数の企業に導入されています。SAP Emarsys Customer Engagementは、マーケターの目的達成のために作られたプラットフォームです。機動性の獲得や、顧客およびパートナーとの信頼獲得など、多くのビジネス効果を創出できるので、小売業・Eコマース・航空会社・ホテル・旅行会社など、活用している企業は多岐にわたります。

エンゲージメントの高い顧客をピックアップしアプローチすることで収益を大幅に増加させた企業や、世界中のコミュニティにパーソナライズされたメッセージを毎日配信する企業など、様々な活用方法があり、自社の目的に合わせた運用が可能です。

まとめ

パーソナライゼーションとは、データの分析を通して、企業が顧客一人ひとりに対して最適な提案を選定するマーケティング手法です。コンバージョン率の向上だけでなく、顧客ロイヤルティを高めて長期的な関係を構築することを目的として行われます。インターネットの普及に伴う顧客の価値観およびプロモーションの多様化、従来型マーケティングの限界などを背景に重要視されるようになりました。

実施するメリットとしては、効率的なマーケティング、潜在顧客の獲得、既存顧客との信頼関係の構築などが挙げられます。実施の際には提供情報が偏らないよう配慮し、個人情報の取り扱いに注意を払うとともに、定期的な設定の見直しを忘れずに行いましょう。

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