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顧客データ分析とは? 分析手法や重要性、活用事例について紹介

企業にとって適切なマーケティング施策を実施し、効果的に売上を上げるためには、顧客理解に向けたデータ分析が欠かせません。

本記事では、顧客データ分析がなぜ有用なのか、どうすれば適切なデータ分析をできるようになるのかといった観点から、分析手法やおすすめのツールについて紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

顧客データ分析とは?

インターネットやデジタル技術は近年急速に発達し、社会全体へ浸透してきました。それに伴い現在、企業が扱うデータは膨大な量にのぼっています。総務省が公表した「令和2年版 情報通信白書」によると、企業では次のような種類のデータが収集、活用されています。
  • 顧客データ
  • 電子メール
  • 経理データ
  • アクセスログ
  • 業務日誌データなど

(参照元:総務省「令和2年版情報通信白書」)

このうち、以前調査した5年前も今回も変わらず最も活用されているのが「顧客データ」です。そもそも顧客データ分析とは、顧客にまつわるデータを収集、分析した上でビジネスやマーケティングに活用することです。その結果をもって、顧客の理解を深めることにもつながります。

自社の商品やサービスについて売上向上をめざすなら、顧客がどのように考え、行動しているかを把握することは不可欠です。そのため、多くの企業にとっては、いかに精度の高い顧客データ分析を行えるかどうかが課題となっています。

分析に活用しているデータ(企業規模別)

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顧客データ分析の重要性

顧客データ分析が企業にとって重要視されているのは、次のような目的を果たすためと考えられます。

ターゲットの決定

まず、自社が提供している商品やサービスを販売するにあたって、これらを「欲しい」と考え購入し、利用してくれる顧客層を把握することが大切です。つまり、販売ターゲットを特定するためには、誰がいつ、どれだけ購入してくれたのか、などの顧客データが不可欠です。

顧客データがあれば、商品やサービスを販売するために、やみくもに販促活動する必要はありません。ターゲットを決定し、打てば響くと思われる顧客へピンポイントでマーケティング施策を打てるので、より高い費用対効果が見込めます。

顧客ニーズの把握

顧客の声を収集し、データ化して分析することで、実際にどのような商品やサービスを望んでいるのかといったニーズを把握しやすくなるのも目的のひとつです。すでに世の中へリリースしているものについて、ニーズを満たせているかチェックして、改善につなげられるほか、新しくよりニーズに合致した商品やサービスを提供することにもつながっていきます。

顧客データ分析の手法

顧客データそのものは、数値やテキストのかたまりに過ぎません。そのため購買につながりそうな顧客を抽出し、アプローチを効率化させるためには、収集したデータを分析することが必要です。ここでは、一般的によく使われる分析手法を6つ紹介します。

RFM分析

RFM分析の「RFM」は「Recency」「Frequency」「Monetary」それぞれの頭文字から名付けられました。この手法の特徴として、

  • 最終購入時はいつか
  • 購入頻度はどれほどか
  • 購入金額はいくらか

といった3つの指標を基に顧客をグルーピングしていきます。たとえば「10年以上前に、高額商品を一度だけ購入した顧客」や「少額だが直近も頻繁に購入している顧客」といったような性質で分けられるのがメリットです。

デシル分析

「デシル」はそもそもラテン語の「10等分」といった意味合いがあります。この考え方を基にしたデシル分析はとくに購入金額に焦点を当て、金額が多い順に顧客を10等分することからスタートします。たとえば100人いれば、1グループは10人ずつです。そして100人全員分の購入金額に対し、それぞれのグループの合計購入金額がどれほどの割合になっているか、つまりグループごとの売上構成比率を把握できるのがデシル分析の大きな特徴です。

セグメンテーション分析

セグメンテーション分析は

  • 地理的要因
  • 心理的要因
  • 人口動態的要因

などの切り口から顧客データを分析する、最もポピュラーな分析手法です。たとえば地理的要因なら顧客の居住地である国や地域、心理的要因なら趣味やライフスタイルが例として挙げられます。また人口動態的要因なら顧客の属性に関わるような性別や年齢、家族構成などが一般的です。

こうした切り口によるセグメンテーション分析を行えば、自社商品やサービスがどういった顧客に売れているのかを細かく把握できます。すると、販売施策を打つときにもより高い効果を見込めるようになるはずです。

LTV分析

昨今「LTV」といった考え方が注目を集めるようになりました。これはLife(生活)、Time(時間)、Value(価値)の頭文字から取られた用語で、「あるひとりの顧客が、生涯にわたって、企業にどれだけの収益をもたらすか」を意味します。LTV分析は、自社への貢献度が高い顧客を抽出する方法です。

一般的に、販売収益を上げるには、

  • 新たな顧客を獲得する
  • 既存顧客に購入・利用金額を上げてもらう

のいずれかが考えられます。

ただ、前者は認知を広めることから始めなければならず、コストも時間もかかりがちです。そこで近年は新規顧客よりも、既存顧客を育てることにより注力し、LTVを高める動きが各企業で活発化しています。

行動トレンド分析

季節や曜日、時間帯などの時間的な切り口で顧客がとった行動について分析する手法が「行動トレンド分析」です。この手法では、シーズン的なトレンドを把握できるようになり、顧客の分類軸と掛け合わせることで「どのような顧客がトレンドを創出しているのか」も分かります。時間軸と顧客軸とを分析すれば、顧客のニーズに合わせて最適なタイミングで販促活動が可能です。

コホート分析

コホート分析の「コホート」とは共通した属性などの因子を意味する言葉で、まず顧客に条件を付け、いくつかのグループに分けます。それぞれのグループにおいて、時間が経過していくにつれてどのような行動をしているのかを見ていく手法です。

たとえば、契約したサービスを維持継続してもらえているかどうかといった定着率を分析するのに向いています。近年はサブスクリプションサービスが増えてきたのにともない、こうしたコホート分析もよく使われるようになってきました。

顧客データの収集方法

顧客データと一言で言っても、その種類はさまざまで、大きくは「定量データ」と「定性データ」の2つに分けられます。定量データは「数値化できるデータ」で、逆に数値化しにくいようなテキストデータなどは定性データとして分類するのが基本的な考え方です。ここでは、定量データと定性データの具体例や特徴について紹介します。

定量データ

先に述べたように、定量データは数値化できるのが大きな特徴です。いくつかの質問から選択して回答するようなアンケートでは、顧客の年代層や性別を聞かれることがよくあり、こうしたデータは回答した選択肢で明確にデータ化できるため、定量データとして扱われます。

また、購入履歴なども定量データの代表例です。ECサイトであれば、サイトに訪れた顧客のアクセスログや注文履歴などから収集できるほか、リアルな店舗でも会員カードなどから情報を受け取れます。

定性データ

一方、明らかに数値化できないようなデータも、定性データとして収集すれば分析しマーケティングに活用可能です。分かりやすい例としては、カスタマーセンターやお客様相談窓口などで受けた問い合わせやクレーム、ECサイトでの商品レビューなどが挙げられます。

能動的に定性データを集めるには、顧客へのアンケート送付や、SNSで意見を集めるといった方法があります。顧客の深層心理をくみとりたいときには、顧客属性などの定量データとともに、比較的自由度の高い定性データを活用するのもおすすめです。

顧客データ分析の注意点

顧客データを分析すると顧客への理解がより深まり、効果的なマーケティング施策を打てるようになります。しかしその方法を一歩間違えてしまうと、思ったような効果が見込めなくなるため注意が必要です。ここでは、顧客データ分析の際に気を付けたいポイントを3つ解説します。

分析のシナリオを明確にする

正確に顧客分析をするためには、「対象となる顧客」を決めることが大切です。自社の商品やサービスを購入してくれている顧客の情報から年齢や性別、アクセス情報などを分析し、自社がターゲットにすべき顧客像、つまり「ペルソナ」を明らかにしていきましょう。

必要な情報へワンストップでアクセス可能とする

企業は通年、さまざまなアンケートや施策を実施するため、顧客にまつわる情報は各部署やシステムに分散していることがよくあります。すると全社で顧客分析を行おうとしても、都度Excelなどの手作業が発生しかねません。その結果、データ処理に時間がかかってしまい、当初想定していたような分析が進まないことも考えられます。

効率よく顧客分析を行うためには、部署ごとに分散したデータを一元化する仕組みが不可欠です。必要な人が必要なデータへスピーディにアクセスできるだけでなく、セキュリティも担保できなければなりません。各部署が持つ顧客データを社内で適切に連携させられれば、自社のターゲットとしている顧客について、すみずみまで理解できるようになります。

そのためには顧客情報に特化し一元的に管理できるCRMと、全体的な経営資源をまとめて管理できるERPをシームレスにつなげられる、ワンストップのソリューションを取り入れることも一案です。

市場の成長性を加味する

企業が成長を続けるためには、自社が身を置いている市場についてもしっかり把握することが大切です。たとえば今後も成長を見込める市場であれば、さほど徹底した分析をせずとも流れに任せて自然に売上は上がっていく可能性があります。しかしすでに成熟している市場であれば、正しく分析できていたとしても思ったように業績が上がらず、衰退するおそれもあります。

一般的に、顧客データ分析と言えば、過去のアクセス履歴や購入履歴など「過去」の実データを基にしたものが多いものです。ただ、社会や市場は刻一刻と変化し続けています。そのため、将来の販売向上をめざしていくためには、自社分析だけでは足りません。本当に現在の市場だけで戦っていけるのか、市場の成長性も加味しての検討が必要です。

昨今はAIを活用することで、比較的低コストでより精度の高いトレンド予測も可能になっています。こうした最新のデジタル技術も積極的に取り入れ、データ分析に活かしていくことが重要です。

顧客データの活用例

ではここからは、よりイメージがわきやすいように、顧客データをうまく活用し成功している他社事例について2つ紹介します。

ボトルネックの可視化

産業機器の部品を製造・販売している企業では、営業の成果が上がっておらず、その原因も不明の状態でした。また受注した案件を一覧化するのにExcelへ手作業で入力するなど、時間や手間の負担も課題となっていました。

そこで対策として考えられたのが、ツールによる顧客データの分析、活用です。なぜ顧客が自社の部品を買ってくれないのか、といった原因を突き止められ、改善に向けて動き出せるようになりました。営業担当者もExcelの手作業から解放され、案件管理の効率化や負担減によるモチベーションアップにもつながっています。

成約率の向上

IT機器の販売から保守メンテナンスまで行いICT事業も展開している企業では、社内の各拠点や各部門で保持している情報を営業担当へ共有できず、機会損失が課題となっていました。

その対策として行ったのが、顧客情報をはじめ、必要なデータを一元的に統合管理できるCRM/SFAツールの導入です。各拠点や部門で分散しているデータをツールで自動的に連携させることで、最前線で顧客と接する営業と、それを後ろから支えるサポート部門とがしっかりタッグを組めるようになりました。その結果営業の顧客理解が進んだ同社は、成約率や生産性の向上を実現しています。

顧客データ分析におすすめのツール

顧客データ分析を効率的に行うためには、それを目的に開発されたツールを活用するのがおすすめです。ここでは主にMAツールとCDPツールについて、それぞれの特徴を解説します。分析強化を図りたい場合には、ぜひ参考にしてみてください。

MAツール

まず「MAツール」のMAは「Marketing Automation(マーケティングオートメーション)」の頭文字を取った用語であり、その名のとおり、マーケティングを自動化させるツールを意味します。

マーケティングに関わるデータは、先に述べた定量データと定性データをふくめ膨大な量にのぼります。MAツールは、さまざまなシーンで収集したデータの分析、一元管理が可能です。CRMツールやSFAツールと連携させることで、よりきめ細かく分析できるようにもなります。その結果、適切なマーケティング活動を効率的に実施可能です。

さらに、見込み客のニーズによってセグメント分けし、コミュニケーション強化を図れるのもMAツールの特徴です。見込み客の購入意欲を十分に高めてから商談に移れるため成約率が向上するほか、一人ひとりの見込み客の対応漏れを防げるのもメリットと考えられます。

CDPツール

「CDPツール」のCDPは「Customer Data Platform(カスタマーデータプラットフォーム)」を略したものです。今や顧客データはPCのみならず、スマートフォンなどモバイルデバイスから収集されるケースが一般的となっています。CDPツールは、そうした複数のツールやシステムに分散した顧客データを収集、統合し、一元管理できる点で、高く評価されるようになりました。

CDPツールの特徴として、まず名刺や自社のWebサイト上から収集した社名や氏名、電話番号、メールアドレスといった顧客属性データを収集できることが挙げられます。

また、Webサイトに訪れた顧客の行動をアクセスログやカート情報などから収集し、パターンを把握することも可能です。MAツールと連携することで、分析力をさらに高め、顧客ごとに最適なマーケティングを打てるようになります。

CDPソリューションとしてこれから導入するなら、SAPジャパンが提供している「SAP Customer Data Platform」がおすすめです。企業が持つあらゆるデータを、顧客データと組み合わせることで、社内のあらゆるチャネルから常に最新の顧客データへアクセスできます。

また、これまでのCDPツールでは、大量のデータを扱うことからセキュリティ面の課題もありました。その点、同ツールでは包括的にデータプライバシー戦略を策定するようサポートしてくれるなど、顧客データをしっかり保護できる仕組みが備わっています。

まとめ

売上を向上させるには顧客理解が大前提であり、そのために顧客データ分析は欠かせません。分析する際には、市場の成長性を見ながらペルソナを決定し、必要とするデータへ迅速かつ適切にアクセスできるツールを選ぶことが大切です。

ツールにはさまざまな種類があるものの、「SAP Customer Data Platform」のような次世代型CDPツールを導入すれば、より高度な分析により潜在的な見込み顧客を見出しやすくなります。結果として一人ひとりの顧客に最適なマーケティング施策を打てるようになり、売上や生産性向上にも寄与できるはずです。興味を持たれた方は、ぜひ導入をご検討ください。

大きな見返りをもたらす、顧客データヘの新たなアプローチ
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