商品管理Eコマース

BtoB ECの市場規模はどのくらい? ECとの違い・課題・注意点とは

BtoB ECの市場規模は個人消費者中心の市場よりも大きなものになっています。また、国内のITインフラの普及などによりEC化率が高まっており、今後も拡大する予想です。本記事では、そのBtoB ECの状況を説明しつつ、導入の効果や構築方法などを紹介します。

BtoB ECとは企業間の電子商取引のこと

BtoBはBusiness to Business、ECは電子商取引を意味するEコマースを略した言葉です。つまり、BtoB ECとは企業間の取引をインターネット上で行うことを指します。BtoBの対面取引を通販サイトで実現するイメージを浮かべてもらうと分かりやすいです。

取引の方法も従来の電話・FAXやメールを使うアナログな方法と異なり、専用のECシステムを利用して取引を行います。Eコマースの方が手間は少なく、受発注を効率的に処理可能です。また、インターネットができる端末さえあれば場所を選ばずに受発注業務ができる点も従来の方法と異なります。

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BtoC ECとの違い

BtoC ECは企業と個人(Consumer)間で行う電子商取引のことです。一般消費者が利用する大手通販サイトが該当します。BtoBは企業同士で取引を行い、ある程度取引先を絞った運営形態を取っていることが多いです。BtoCはオープンでアクセスしやすい形態で一般消費者を相手に商品を販売するという点に違いがあります。

BtoB ECで取引される商品はカタログに掲載されているような既製品が主です。利用方法は通常のECサイトと変わらず、必要な商品をカートに入れたあとに注文手続きをウェブ上で行います。決済はクレジットカード、代引きなどよくある支払い方法のほかにBtoCでは見ない掛け売りに対応しています。

BtoB ECの市場規模は372兆円

経産省の調査によると、大きな動きではないもののBtoB ECの市場規模は2017年から着実に数字を伸ばしています。新型コロナウイルスが社会に大きな影響を与えた2020年に少し伸び悩みを見せましたが、2021年のBtoB ECの市場規模は372兆7,073億円になり、前年から11.3%増加する様子を見せています。

デジタル化などの影響を背景に今後も引き続きBtoB ECの必要性は維持されたまま市場規模は拡大し、EC化率も伸びていくことが予想できます。

出典:経産省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書

BtoC ECの市場規模

2021年のBtoC ECの市場規模は物販・サービス・デジタルの三つの分野を合計して20兆6,950億円です。前年よりも約1兆5千億円増加しています。

内訳を細かく見ると、物販分野では前年の巣ごもり消費から引き続いて市場拡大が続いており、8.61%の伸び率の増加が見られます。特に生活雑貨や食品、生活家電での消費が大きくなっています。デジタル分野は前年よりも3,047億円の市場規模増加、伸び率は12.38%を記録しました。

サービス分野は2020年に新型コロナウイルスの影響による市場規模の縮小が目立ちました。しかし、チケット販売の市場が回復するなどの影響で前年から2021年になって592億円増加しており、伸び率は1.29%とわずかながら規模が拡大する傾向が見られます。

CtoC ECの市場規規模

経産省の調査によると、2021年のCtoC ECの市場規模は2兆2,121億円です。2020年は1兆9,586億円で、前年から2021年にかけての伸び率は12.9%というデータが出ています。

細かく見ると、市場拡大の要因として以前から個人間ECの需要が増加しているという背景があります。また、新型コロナウイルスによる影響によってインドアで楽しめるエンタメやホビーの消費が増加したことも理由として考えられます。

BtoB ECが拡大している理由・背景

企業間取引にECサイトが活用されつつある理由について、社会的な背景・事情を含めながら解説します。BtoBのEC化率は上昇トレンドにあり、その要因として以下の3点が挙げられます。

ITのインフラ整備

日本でもスマートフォンやパソコンなどのIT機器が普及しています。しかし、ITに対するリテラシー不足などが原因でビジネスシーンでは電話やFAX、対面などの従来的な方法が好まれる傾向がありました。令和3年の情報通信白書によると、実際に行われているICT投資も欧米と比べると低い金額にとどまっており、ITへの投資に消極的なことを示すデータがあります。

それでも国内のITインフラの整備は遅くとも着実に進んでおり、今ではほとんどのエリア、多様なシーンでインターネットを活用した情報のやり取りが行われています。BtoBにおいても例外ではなく、紙や口頭によるやり取りを減らして電子取引を日常的なものとして取り入れる流れが出てきつつあります。

EC化の普及

経産省のデータを見ると、各業種のEC化率は徐々に数字を伸ばし続けており、国内の業界にも少しずつBtoB ECが浸透していることを示しています。ただ、普及の割合は業種によって差があります。

EC化率が高い業種を見ると、規格化された商品を扱う業種が多いです。これは、商品の性質上、サイト上からでも情報の把握がしやすいこともあってEC化がしやすいという理由があります。逆に、現物のチェックが重要な業種やサービス業務が多い業種でのEC化率は低めです。

業種によってEC化の差はありますが、少子高齢化などの社会問題を原因とする働き手不足や働き方改革による労働時間の短縮と業務の効率化、あるいは取引先からの要請などによってEC化を求められる可能性は年々高くなってくることでしょう。

生産性の重視

少子高齢化、働き方の多様化、長時間労働の是正、働きやすい環境作りなど、時代に合う組織環境にする働き方改革を企業は求められています。また、「2025年の崖」と言われる旧来のITシステムが技術的負債となってIT予算を圧迫するリスクが危惧されており、DXの必要性を国も取り上げています。

こうした状況の中、今まで通りのアナログ的な手法を見直さずに業務をこなしていては根本的な改革には至りません。企業はデジタル化などを通じて早急に生産性を向上させる必要があります。BtoB ECもそういった流れのひとつでもあり、EC化に切り替えることで大幅な業務効率化と時短効果が見込めます。

BtoB ECは大きく2種類ある

BtoB向けのECサイトには種類があり、用途に応じて使い分けられています。ECサイトの導入を考えている場合は目的に応じたタイプを選ぶとよいでしょう。

クローズドBtoB型

BtoB ECはクローズドで運営されていることが多々あります。クローズドの特徴として、得意先や会員登録している企業だけが利用できる点、閲覧にはアカウントが必要で一般公開されていない点があります。

クローズドにするのは信頼できる企業とだけ取引したい、顧客ごとに価格を管理したい、会員のみに情報提供したいなどの目的があるためです。活用事例として社内販売、職域販売などで採用されており、特定の条件を満たす顧客や既存顧客とだけ取引したい場合に適しています。

販売においては取引先ごとで提示価格や割引率を変えたり、そもそも取引できる商品が異なったりすることも多いです。

スモールBtoB型

小口取引がメインの場合、スモール型としてオープンな販売形態が取られていることがあります。クローズドと異なるところは一般公開されているため誰でも閲覧できることです。オープン型のBtoC ECとあまり変わりません。間口が広いため、多くの見込み客にアプローチできます。

BtoBの場合、営業部のリソースに限りがあるためどうしても取引金額が大きい企業、大企業がメインの顧客になります。小規模の企業や個人の顧客は優先順位が低いため手が回らないことがほとんどです。そこで活躍するのがスモール型BtoB ECであり、運用目的として取りこぼし受注の獲得や新規顧客の開拓に主眼が置かれていることが多いです。

BtoB ECを行うことのメリット・効果

ECサイトをBtoBに取り入れることで既存業務の見直しに繋がり、社内にあるムダな作業の削減が可能です。その結果、お金や人的リソースを別の場所に分配しやすくなります。具体的な内容は以下の3点です。

受注作業の業務効率化

電話・FAXなどのアナログな手順で行っている受発注業務をECシステムの導入で効率化できます。人間にはヒューマンエラーがつきものであり、ミス防止の確認作業も必要になります。しかし、受発注業務をECシステムに置き換えればミスが起きる心配が少なく、デジタル化・自動化による業務効率化が可能です。電話の聞き間違いやメールやFAXの受発注で起きやすい誤入力と誤発注・出荷の防止効果も期待できます。

ECサイトの存在は顧客にとってもメリットがあります。商品の仕様・詳細を知りたい場合、商品ページを見るだけで確認可能で、商品について問い合わせる手間が減ります。受注フローにおいても顧客が必要事項を入力するため、自社や取引先双方の負担軽減に繋がります。

新規顧客の獲得

通常のBtoBは既存顧客が主のため、新規顧客獲得のメリットはオープン型、スモール型のBtoB ECに限った話になります。スモール型は運営形態上、誰でもECサイトを閲覧できるため取引先の獲得を目指して営業をかける必要がありません。また、対面取引だと営業の範囲に限界がありますが、インターネットでは場所に関係なく取引可能です。

スモール型ECサイトの公開は、商品カタログ自体をインターネット上で世界に向けて掲載しているのと同じようなものです。ECサイトを訪問してきた企業や個人が見込み顧客となり、新しい販路拡大に役立ちます。ECサイトの活用で顧客データの蓄積もできるため、データを使ったマーケティングの改善にも繋げられます。

コストの削減

ECシステムによる自動化・デジタル化が進むと業務が効率化され、仕事に使っていた紙の使用量が減ります。それに伴って書類の管理費も削減できるためペーパーレス化によるコスト削減が可能です。業務の見直しで作業フローを改善することにより、ムダな業務の削減にも繋がります。

ECシステムの導入によって人的リソースの省力化も可能です。余計な作業がなくなるため人手が余るようになり、ほかの重要な作業に人を振り分けられるようになります。例えば、新規顧客の開拓と営業に力を入れたり、ECサイトでは対応できないオーダーメイド商品に注力したりできます。

BtoB ECを行うことのデメリット・課題

BtoBの取引にECシステムを導入することで業務の効率化や顧客データに基づいたマーケティングが可能になりますが、その一方で導入費や構築の困難さというデメリットも存在しています。

BtoBは基本的に特定の企業と取引するという性質があり、特別な商習慣を残すケースもあるため、BtoCのECサイトとは異なる仕様で構築する必要があります。業務フローの見直しや導入時の要件定義の労力に加え、ECシステムの構築費用も高額になりやすいです。

既存業務からECシステムに移行する際には社内部署との調整が欠かせません。従来の方法に慣れている取引先にも発注方法の変更を伝える必要があり、場合によってはサポートが必要になります。このようにBtoB ECサイトは構築が完了すれば様々なメリットが得られますが、そのプロセスは簡単ではありません。

BtoB ECにおけるサイトの構築方法

ここからは、BtoB向けECサイトの構築方法について種類別に紹介します。構築方法については以下の記事でも触れているため、併せて参考にしてください。

ASP型

ASP事業者から完成しているECプラットフォームを提供してもらうのがASP型です。ゼロから開発せずに完成しているものを利用するため、短期間での導入が実現可能で初期費用を安くできるメリットがあります。また、サービスを利用するユーザーを多く抱えるため、ほとんどのサービスでセキュリティ対策を万全にしています。自社で対策を考える必要がない点もメリットになるでしょう。

事業者がプラットフォームの更新を行うため、自社で対応せずとも新機能などのサービスを利用可能です。ECサイト構築のために開発したり管理したりする手間がかかりません。専門知識がなくても手軽に利用できるのが魅力ですが、独自機能などを追加しづらいなどカスタマイズ性が低いというデメリットはあります。

パッケージ

ECサイトの構築に必要な機能が盛り込まれたECパッケージ製品を購入し、自社で構築する方法です。利用の際はITベンダーから販売されているものを購入します。ECサイトを構築できる製品は多くの会社から販売されているため豊富な種類の中から選べます。パッケージに含まれている機能を使って自社で組み立てて作っていくため、納得のいくECサイトを手軽に構築しやすいのがメリットです。

どのパッケージでもショッピングカートなどの基本機能は共通で搭載されています。しかし、パッケージごとに特色があるため、自社が求める機能がある製品を選定する必要があります。そのほかにもITシステムは時間がたつにつれて古くなっていくため、システムの最新性を保つには定期的なメンテナンスとコストをかけて行う更新が求められます。

オープンソース

誰でも利用可能な形で公開されているソースコードを利用して、ECサイトを構築する方法です。利用にはサーバーを用意してインストールする必要があります。オープンソースのプログラムは無料で利用できるため、コストをかけずに導入可能です。知識さえあればソースの編集も自由にできるため、カスタマイズ性にも優れています。

デメリットとしてコードが公開されている関係上、脆弱性を狙われるリスクがあります。利用する際はセキュリティ対策を十分にしておきましょう。また、事業者のものではないためトラブル発生時にサポートを受けられません。原因を調べて自己解決する力が求められます。

フルスクラッチ

ゼロからECサイトを開発して構築していく方法です。自由度が高く、自社が求める要件を満たすECサイトを構築できるのがメリットです。

デメリットはほかの方法と違い既存のものを使わないため、非常に多くの手間とコストがかかります。加えて、開発にはECサイトを開発するスキル・専門知識があるIT人材、自前のインフラの用意が必要です。開発期間を置くため導入まで長い期間を要し、運用開始以降も保守・運用の負担がかかります。

様々なコストがかかる方法ですが、フルスクラッチなら顧客のニーズに合わせた独自機能の追加やデザインの改善を自社で柔軟に取り組めます。改善から効果計測までを迅速に行える点も強みです。とはいえ、最近は拡張性に優れたECパッケージやクラウドが登場しているため、そちらを選ぶ企業も多いです。

【SAP Commerce Cloud】クラウドベースのeコマースプラットフォーム

SAP社が提供する「SAP Commerce Cloud」はクラウド型のeコマースプラットフォームです。BtoB ECに役立つ一連のソリューションが提供されます。製品の特長について以下で紹介します。

購買と販売のシンプル化・見える化

SAP社が提供するソリューションによって、商品検索から販売などBtoB ECに必要な一連の機能を提供します。サイトのデザインを決めるテンプレートからコンテンツ管理を担うCMS、ECシステムに欠かせないコマース機能や商品情報管理がSAP Commerce Cloudに統合されており、BtoB ECに必要な機能が集約されています。これらの機能は顧客の購買プロセスをシンプル化するようにできており、コストの削減や顧客満足度の向上、収益の拡大に貢献します。

ECシステムや商品管理の際には直感的なインターフェースが利用できます。ユーザーフレンドリーで使いやすく、編集作業も容易です。また、BtoB ECでは取引先ごとに価格を変更することがありますが、本ツールでも顧客や設定したグループごとに商品価格を分けて表示可能です。

激しい市場の変化に対応

ヘッドレスアーキテクチャ仕様のため、あらゆるデバイスの画面がブランドのチャネルとして利用できます。ヘッドレス仕様によって管理システムと顧客が閲覧するECサイトはそれぞれ独立構造を取っています。これにより、運用・保守コストの削減と変化する市場と顧客、最新のIT技術に素早く対応しやすいEコマースプラットフォームの提供を実現します。また、本ツールはクラウド型のため、オンプレミス型と比べて高い拡張性があります。その他のSAP社提供のツールやサードパーティーアプリケーションとの接続も可能です。

AI主導のパーソナライゼーション

AIの機械学習を活用して顧客の行動の意図を検索履歴などから把握し、好みやニーズにあった製品とのマッチング体験を提供します。AIによるパーソナライズで顧客に適した製品のレコメンデーションができるため、効率的なアプローチが実現します。これにより顧客満足度やコンバージョン率の向上効果が期待できます。

まとめ

BtoB ECの市場規模はBtoC ECを上回る規模となっています。ECサイトの導入によって業務効率化やコストの削減にも繋がるため、今後もEC化率は上昇し続けて市場規模は拡大していく見込みです。

ECサイトを構築する手法としてASP型など様々な種類があります。導入する際にはそれぞれの長所や短所を把握する必要があるでしょう。数ある製品群の中でも、SAP社が提供する「SAP Commerce Cloud」がBtoB向けECサイトの構築ソリューションとしておすすめです。構築方法でお悩みの場合はぜひ導入を検討してください。

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