マーケティングサービスセールス

営業とマーケティングが連携できない理由

日本においてマーケティング担当者と営業担当者の仲があまりよくない、ということはよく聞かれる悩みです。

この問題は日本だけのものではありません。マーケティング先進国である米国や他の国でも同じようにマーケティングと営業が上手く関係を築けていない企業は多く存在しています。

こちらの調査では米国の営業担当者とマーケティング担当者に向けたアンケートでは、実に約87%がお互いにマイナスの印象を持っている、という結果が出ているほどです。

営業、マーケティング双方の言い分

典型的な意見はこうです。

営業担当者はマーケティング担当者に対して、

  • 会社の売り上げに貢献していない
  • 十分な数の見込み客を生み出していない
  • 見込み客の質が悪い
  • お客と接しないマーケティングは楽なものだ
  • 営業担当者たちの感じていることを汲み取っていない
  • 見込み客の声を反映していない
  • 金食い虫だ

一方で、

マーケティング担当者は営業担当者に対して、

  • 獲得した見込み客を無駄にしているし十分に働きかけていない
  • クロージングするだけの営業は楽なものだ
  • 会社のブランディングやイメージを考慮しないで製品サービスを販売している
  • 会社の成長を長期的に見ていない
  • 口を開けて待っているだけ
  • 買う寸前のリードを渡さないと質が悪いと言う

などがあります。

この争いは終わることを知らず、日本の多くの会社でも発生しています。

しかし、営業とマーケティグが上手に連携を行い、業務を進める企業では売り上げを20%上げることができる、という調査結果も出ています。(詳しくはこちら:The power of smarketing)

なぜ “マーケティングはお金を投入してひどい質の見込み客しか獲得しない”という営業側の言い分であったり、“営業担当者はマーケティングが苦労して集めた見込み客をクローズしない”というマーケティングの言い分が発生するのでしょうか。

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営業担当者とマーケティング担当者が連携できない理由

営業担当者とマーケティング担当者は、なぜそれほど意見が違うのでしょうか。

一言で「営業とマーケティングを取り仕切る責任者のリーダーシップ不足」であると言ってしまえばそれまでですが、その裏に潜む各役割の詳細を見てみましょう。

英語版Wikipediaによると、セールス(営業)とは与えられた期間で製品/サービスを販売する活動、のことを指します(当然ですが)。

その企業が持っているものがサービスであればサービスを、製品であれば製品をといった具合に製品/サービスを販売し対価を受け取ります。その形は、製品/サービスによっては、ダイレクトセル(見込み客へ直接販売)やチャネルセル(代理店が販売)など様々な手法があります。

一方でマーケティングとは、市場や見込み客のことを正しく理解し、将来的に会社の顧客となる可能性のある人たちを獲得(生み出し)し、その人たちを営業担当者に一定の期間に定義づけされた数だけ渡す、活動を指します。

見込み客や顧客目線でこのマーケティングと営業担当者の役割を非常に簡略化すると、入り口を作っているのがマーケティングで入り口から入ってきた見込み客を効率良く営業担当者へ引き渡し、見込み客を引き継いだ営業担当者が見込み客を出口(顧客化)へと誘います。

つまり、結局のところは同じゴール(会社の成長)を達成するために同じ流れを一緒に作る非常に重要な役割を果たす活動に関わる人たちになります。

しかし同じゴールを持ちながら、なぜにもこんなにお互いの言い分が違うのでしょうか。これはお互いの部門の特質に大きく依存しています。例えば時間の使い方にしても両者は異なる日常を送っています。

一般的なマーケターの役割

マーケティング担当者は比較的デスクの上で仕事をすることが多くなります。記事を書く、販促品を作る、プロモーションを行う、デジタルの戦略を策定する、外部ベンダーとやりとりをする、イベントの準備に時間を費やす、セミナーや展示会を行うなどで見込み客を獲得する、などがその役割になります。そのため、実際に顧客や見込み客と物理的に離れた場所で時間を費やすことが多くなります。

一般的な営業の役割

一方で営業担当者は常日頃から、見込み客や顧客と物理的に非常に近い位置にいます。マーケティング担当者から引き受けた見込み客への電話、アポ取り、商談、プレゼン、顧客化した人たちのサポートやクロスセルにアップセルのためのアポイントメント、などがあります。営業担当者によっては、自分でリストをつくりアポを作っていく人も多くいます。一般的な営業担当者でも内勤営業(インサイドセールス)や外勤営業などの種類がありますが、基本的には有望見込み客や顧客と直接触れ合う機会が多くなります。

上記のような役割分担が通常は存在します。もちろん、会社の規模や、成長のフェーズでは綺麗に分業ができていないケースが多くあり、また日本企業では営業重視の傾向が強くマーケターの役割が広報宣伝やPR、カタログ製作のみに限定されているケース(マーコム)も多くあるため単純には一般化することは難しいのも事実です。

しかしマーケィング担当者と営業担当者の本来の役割は上記のようになることが多い実情があります。そのゆえ、必然的に必要とされる能力にも違いが生じます。

一般的なマーケターの会社への貢献の指標とそのために必要な能力

従来型のマーケターはLTV(Life Time Value)などを考えることがあるため長期的な視点をもちながらシナリオを立て、結果として得られたデータを分析します。多くの人を獲得するためのプロジェクト(キャンペーン)単位で見込み客の獲得を最大化かつ効率化させようとするため中長期的なスパンで物事を考える必要があります。そして獲得した見込み客を営業担当者に一定の期間で一定の数を引き渡すことがマーケターとしての企業への貢献となります。

そのため、マーケターは物事を体系的に考えたり学術的な方法をとる人の数のほうが、人力であったり直感的で行う人たちの数より多くなりがちです。昨今であれば、既存のデータベースを用いて理想の見込み客像を発見するためにデータドリブンマーケティングなどの統計学を用いる手法などもさらに好まれる傾向が強くなってきているようにも見受けます。

一般的な営業の会社への貢献の指標とそのために必要な能力

営業担当者は実際に一人一人の見込み客と接するため、人との接触の瞬間に重きをおくことが必要です(もちろんその後にアップセルや、クロスセスを行うこともあります)。さらに、日本であれば商談は対面のミーティングで行われそのコンテキストや建前などを見抜いたり、見込み客の社内事情を考慮して決済まで持っていくための交渉能力が重要になってきます。

そのため、優れた営業担当者は相手の言いたいことや背景を瞬時に見抜く直感的な人間関係の構築能力に長けた人が増えていきます。そして人間関係を構築したのちに顧客化し、売り上げを立てることが営業担当者の企業への貢献となります。そこに学術的な理論の必要性はマーケティングと比べると高いか?と言われるとそうではないかもしれません。

つまり、これらのことを考慮すると言い分が異なるのは比較的自然なことなのです。二つの部門は同じ目標に向かうのですが、役割が見込み客と顧客に対するアプローチの仕方が異なり、さらには考え方などが異なる可能性が高い、ということです。

マーケティングと営業における3つの状態

マーケティング担当者と営業担当者が組織的に連携できない理由には3つの状態と原因が存在します。

(1)マーケティングと営業の連携の定義が存在していない

特に企業規模が小さくなればなるほどマーケティング担当者が広報宣伝やPR、主催イベントの調整などをするため戦略的なアプローチや見込み客獲得に専念ができず、連携以前の問題にマーケティングができていないケースがあります。こういったケースでは、そもそもしっかりとしたマーケティグ部門が存在していない、そして存在している場合でも営業担当との連携の定義が行われていません。そのため、マーケティング担当者は、営業担当者が何をしているのかわからない、また営業担当者はマーケティング担当者が何をしているのかわからない、もしくはセミナーの手配やチラシの製作をしてくれる人 程度に捉えられることになります。

(2)マーケティングと営業の連携の定義はされている

このタイプでは、連携の定義はされているためマーケティング部門が存在しているケースです。このケースでは、マーケティングと営業の担当する領域が決められているため、互いに干渉はしないのですがプラスαの価値を互いの部門間で生み出すことは期待できません。しかし、一応見込み客の定義などを決めてはおり、マーケターが展示会やセミナーなどで獲得した人たちを営業担当者に渡すなどをしています。ただし、互いに干渉しない(できない)ためマーケターからすると見込み客は獲得し十分な数を営業には渡しているが….、営業担当者からすると定義した見込み客はもらっているのだが質が…といった具合にプロセスと結果の因果関係が不明瞭な状態が発生してしまいます。一般的にマーケティングの指標を”リードの数”で捉えている場合が多いのがこのパターンです。

(3)マーケティングと営業が連携はしている

このケースでも見込み客の定義などは行われています。加えて、定期的に営業責任者とマーケティング責任者などが互いにフィードバックを行うなどの連携を行い見込み客の質の確認、顧客化の率などを共有しています。またマーケティングが重要視するブランドや、営業担当者が重要視するアカウントなどの共有もできており、ペルソナやカスタマージャーニーなども明確に互いに理解し合っています。そのためお互いの言語での会話を行うことが可能で、スムーズに改善などを行っていくことが可能なレベルです。一般的にこのパターンに属するマーケティングは、ナーチャリングなどをきめ細かく行っていたりMAツールを導入しているケースが多い特徴があります。

統合するには共通のシステムを使いこなすなどのマーケティング担当者と営業担当者が同じ土俵で同じゴールに向かう必要性も高まってきます。そのためには、まずはマーケティング担当者と営業担当者が話し合い、互いに違いと業務上での課題を理解することから始めることが重要になってきます。

つまり、マーケティング担当者が人力で見込み客を獲得しながら広告代理店にネット広告を丸投げし、営業担当者がエクセルで見込み客リストを各担当者が管理する…などではなく、マーケティングや営業担当者が共有の言語で会話できるようにプロセスを定義し組織的な改革を行う必要があります。そして企業内でペルソナおよびカスタマージャーニーを定義し(もちろん専任のマーケターを社内に配置することが重要です)明確なゴールを決めることが、マーケティグ担当者と営業担当者の連携のレベルを上げていくために大切な要素となってくるのです。

現在は消費者が非常に強い購買力をもち情報を探しています。そのため、自分の探している情報や自身の価値とならないものであればすぐに自分に合った情報を探し始めます。つまり、その入り口を作るマーケターと、中継点を通過した後にゴール地点へと誘導する営業担当者が、見込み客に対して同じコンテキストのサービスや価値を提供しないと、見込み客を顧客化する難易度が高まる(逆を言うと共有したコンテキストを提供すればゴールまで導きやすい)ということになります。

マーケティングと営業の連携が強い経営基盤を作る

弊社のお客様では、営業とマーケティングが役割分担を明確化し、定期的に共同でレビューを行うことを実施しただけで非常に高いROIや売上向上を達成した企業があります。

役割分担の明確化では、リードの定義の認識合わせ、リードの受け渡し方法の理解促進、行動結果の記録方法の認識合わせ、各種指標の定期的な共有 などを行っています。また、定期的な共同レビューでは成功要因の共有と横展開 、失敗要因の整理と改善活動の実施、課題を解決するために建設的な議論 などを行うことでお互いの距離感が大きく縮まり、今では阿吽の呼吸で共通のゴールに向かっています。

その成果の一部として、商談件数が1.8倍、商談単価は1.9倍、ROIは3.4倍にまで改善されています。もし連携が進んでいない場合には、話し合いから始まり徐々にマーケティングと営業を連携させ強い経営基盤の構築を目指してみてはいかがでしょうか。

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