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WebサイトリニューアルのトレンドはコンテンツとUX

Webサイトのリニューアルは、何らかのテーマに則って行われます。そこには、最近のWebデザインはもちろん、デジタルマーケティングのトレンドも多く含まれています。

この記事では、最近数カ月内に出されたWebサイトのリニューアルに関するニュースリリースの中から、トレンドとしてチェックしておきたいサイトを紹介します。

コンテンツの充実を図る企業が多い

一通り目を通しての感覚ですが「コンテンツ」をリニューアルのポイントにしているケースは目立ちました。やはりコンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングを実施する企業が増えている印象です。参考になりそうな事例を、いくつか紹介していきましょう。

株式会社メイサービス「健康診断事務代行」サイト

株式会社メイサービスは、名古屋市の企業事務代行、BPOのサポートを行う企業です。コーポレートサイトのリニューアルを10月に行い、具体的な内容として「健康診断特設ページ」の追加が案内されています。

株式会社メイサービス

参考)https://www.meiservice.com/

コーポレートサイト全体の作りとしては、オーソドックスなものです。今回追加された健康診断事務代行のコンテンツは、次のものです。

株式会社メイサービス_2

参考)https://www.meiservice.com/medisupport/

記事コンテンツですが、ユニークなのは「健康診断事務がテーマの、物語風コンテンツ」という所です。人事部に配属された新人、メイさんが健康診断の事務を通して奮闘する様子を連載していくようです。

記事コンテンツというと解説形式のものが定番ですが、同じ内容でもこうやって「物語」として見せるなど、一工夫してみるのも良いと思います。

意図的に会話を多く取り入れているので、読み手の心理的なハードルも下がるはずです。また自社の事例を基にした内容、という事ですので、会社の情報資源を有効に活用できていると言えます。

「事例集」「お客様の声」という定番コンテンツとは別に、こうした別の形のコンテンツに社内に蓄積した情報を生かしていくのも良いでしょう。

現在は同じページ内にコンテンツ追加しているようですが、ユーザーの利便性やアクセス解析での行動把握、SEOで効果を出すために、サイト構成を考えてみるとより効果が高まりそうです。

参考)株式会社メイサービス「健康診断事務代行」サイト リニューアル
ニュースリリース:PR Times(2016/10/11)
 

Brooks Brothers 特別サイト「MADE IN AMERICA

ファッションブランドは、存在そのものが物語です。アメリカのファッションブランド、ブルックス・ブラザーズは、ブランドの価値を伝える特設サイト「MADE IN AMERICA」を公開しました。

MADE IN AMERICA

参考)http://www.brooksbrothers.co.jp/top/cms/asp/page.asp?id=madeinamerica

伝統があるブランドは価値が高い反面、時代が進んでいくにつれ古くなっていくという運命にあります。国内外で多くの伝統的なブランドがその再生や再定義を行っていますが、その中心となるツールがWebサイトなのは言うまでもないでしょう。

ブルックス・ブラザーズは、コーポレートサイト内にあるブランド紹介、ヒストリーページとは別の位置づけで、この特設サイトを作ったようです。

テーマは「クラフツマンシップ(職人の技)」としていて、それを通して自社の高品質な商品を伝えています。コンテンツには動画を使っての概要が、2分弱でコンパクトにまとめられています。海外のファッションブランドは自ブランドの紹介に動画を多く使う、という傾向も以前から見られます。

MADE IN AMERICAの興味深いところは、ブランディングサイトのようでありながら商品を軸にしているため、各商品の案内にリンクしている点です。

直販ではなく店舗誘導がメインなので直接の成果は測れないでしょうが、このサイトから商品紹介ページへの誘導、店舗地図の確認、店舗への問い合わせや実際の集客数をKPIにできそうです。

以前と違い「ブランディングサイトだからPVだけ見ておけば良い」という時代はもう終わりました。こうしたサイトを企画する場合には、商品情報への誘導数などを基にした、効果を測るためのKPIとその計測方法も併せて考えておくと良いでしょう。 

なお、MADE IN AMERICAはまだリリースされたばかりなので、流入経路をきちんと設置していないかもしれません。コーポレートサイト上での導線の設置や、他にどういった流入元を設けていくか。あるいはこの特設サイトをどういう位置づけにしていくかも、興味深いところです。 

参考)Brooks Brothers の特別サイトMADE IN AMERICA が誕生
ニュースリリース:PR Times(2016/10/27)

アート通販サイト「WASABI

コンテンツマーケティングは、すべてに万能な手法ではありません。導入しても効果があまり期待できない分野もあります。

一方、ハマるととんでもない成果を生み出せるジャンルもあります。株式会社NOMALがリニューアル公開した「WASABI」は、アートの通販サイトです。今回のリニューアルでは、アーティストの素顔に迫るコンテンツ施策などを取り入れています。

WASABI

参考)http://wasabi-nomal.com/

アート作品は電化製品と違いスペックで比較できませんし、食品のように他者のレビューが自分の好みに当てはまるものでもありません。自分の中の価値観と合致するかどうかが大切なので、さまざまなコンテンツを通して気持ちを高めていく、というのは有効な手法でしょう。

このニュースリリース内にもありましたが、「アートは敷居が高い」「ネットでの絵の購入に不安がある」というユーザーの心理的なハードルを、コンテンツの力でどこまで下げられるかが注目されます。また、こうした「ネットで売るのは難しいのではないか?」といったアイテムやサービスについて、ネットでの取引が成功するかどうかも楽しみな所です。

このサイトリニューアルではコンテンツの拡充だけでなく、実際に室内に絵を飾った時のイメージがわかるよう、全ての絵画商品ページに絵を飾った室内画像を設置した、との事です。さらに、返品対応の見直しも行っているようです。

コンテンツマーケティングは、良い記事や動画を提供するだけがすべてではありません。優れたサービスへの誘導など目的を達成するためのコンバージョン率を高める工夫が必要不可欠です。そのような全体設計をしながらリリースするようにしたいものです。

なお、このサイトのレイアウトから判断すると、あくまでメインは通販であり、記事コンテンツはサブとして置かれている感じでしょうか。

コンテンツマーケティングを行う場合は、コンバージョンを取得するという目的に対しての適切な配置を考える必要があるでしょう。

参考)日本人が一生のうち一回絵を購入する文化の醸成を目指し、絵の通販購入を後押しする新機能2点を追加!アート通販サイト「WASABI」リニューアルオープン!
ニュースリリース:PR Times(2016/9/30)

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モバイル環境のUXを考慮するサイト

HOME`S」物件ページ

「モバイルファースト」という言葉が流行りましたが、スマホを中心にサイト制作を行うという考え方はすっかり定着したようです。記事内で紹介できなかった複数のサイトでも、パソコンよりスマホの方が見やすい、というものがいくつもありました。

多くの企業では、このモバイル環境のUX(ユーザーエクスペリエンス)ヘの取り組みに力を入れています。

不動産情報サイトの「HOME'S」は、9月末に物件情報ページをリニューアル。改善ポイントは、スクロールによるスムーズな閲覧となっています。

HOME`S

参考)https://www.homes.co.jp/mansion/b-16100070000768/
※任意で選択した、新築マンションパークコート浜離宮ザタワーのスマホページ。

スムーズなスクロールとは、スマートフォンでの操作、見やすさを前提にしたものです。

ニュースリリースによるとリニューアル前は6ページに渡り分散掲載していた情報を、1ページにしたと言います。

タップをして別ページに移動といったパソコンでお馴染みの操作は、スマホで見ている場合は結構な負担になりますので、それが大きく改善されています。

ページの集約だけでなく、間取りや共用部の画像も大き目に取り、ユーザーが拡大しないと見えづらい、という不満も解消できているようです。 

ユーザーテストや調査を繰り返し、今回のリニューアル公開に至ったのでしょう。

最近はプロトタイプツールで良い物が多く出ていますので、できれば動きのあるプロトタイプを作り、ユーザーテストを行ってから正式なリリースへと進むと良いでしょう。

参考)HOME'S、新築分譲マンション物件ページを全面リニューアル
ニュースリリース:@Press(2016/9/29)

VRT利用「ジブンハウス」

住宅販売のサイト「ジブンハウス」は、バーチャルリアリティ技術(VRT)を取り入れたWebサイトでの訴求を行っているとの事です。

 ジブンハウス

参考)http://jibunhouse.jp/

こちらも基本はスマホサイトで公開されています。少し前まで「家のような高額商品を、スマホで訴求してもダメではないか」と言われましたが、今ではそんな事を言う人は少数派になったはずです。

ユーザーの情報収集のツールは明らかにパソコンからスマホへと移っていますので、BtoBなどの一部を除き、スマホを中心にした考えにしていきたいものです。

スマホを中心に考えた場合、気になるのは検証が十分に行われていない点です。パソコンだと数ブラウザをチェックしていたのが、スマホだと自分の端末で少し見てOKを出す、という担当者の姿に何度も出くわしています。

ユーザーはスマホで見ている、という点を意識して、それに合った環境で確認をしていきましょう。

参考)『ジブンハウス』 サイトリニューアル!
ニュースリリース:@Press(2016/9/7)

人工知能を取り入れるWebサイトリニューアルも

最後に紹介したいのが、「エン転職」のリニューアルです。

エン転職

参考)https://employment.en-japan.com/

デジタルマーケティングに非常に熱心な企業ですが、今回のサイトリニューアルでは「AI(人工知能)」により応募者の推薦や、興味を持っている求職者のレコメンドを企業に対して行うのだと言います。

AIは今、デジタルマーケティング技術のトレンドですから、これを使ってのリニューアルは増えていきそうです。

参考)応募意欲の高い求職者を、AIが企業へレコメンド。 「エン転職」本日リニューアル!
ニュースリリース:@Press(2016/9/26)

今回紹介した内容が、Webサイトのリニューアルをお考えの方のヒントに少しでもなれば、幸いです。

2023年 B2B eコマースの状況に関するレポート
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