顧客体験(CX)

顧客接点(タッチポイント)とは?強化する方法と注意点を紹介

変化する顧客のニーズに対応し、企業として利益を追及していくためには顧客接点の強化が欠かせません。顧客接点の強化により、ニーズの正確な把握や集客力の向上が期待できます。本記事では、顧客接点を強化するメリットや具体的な方法、注意点などについて解説します。

顧客接点(タッチポイント)とは

顧客接点とは、企業と顧客が接する機会や媒体、手段などを指し、マーケティング用語ではタッチポイントやコンタクトポイントとも呼ばれます。たとえば、顧客へ商品を販売する店舗やECサイト、商品やサービスの提案、案内をするチラシ、DMなどが代表的なタッチポイントです。

顧客接点の種類

顧客接点には、オフラインとオンラインの2種類があります。オフラインの顧客接点としては、店舗での対応や顧客のもとへ足を運ぶ訪問営業、展示会、セミナー、DMの送付、コンタクトセンター対応などが挙げられます。

オンラインの顧客接点として代表的なのは、WebサイトやWeb広告、Twitter、FacebookなどのSNS、ウェビナー、オンライン営業、チャットを利用したオンラインでのコミュニケーションなどです。

オフラインの顧客接点は、顧客と直接顔をあわせられるため、コミュニケーションがとりやすく信頼関係を築きやすい点が魅力です。また、直接商品を使ってもらったり、サービスを体験してもらったりといった営業ができるため、顧客の興味関心を引けます。ただ、オンラインの取り組みに比べて多額のコストが発生しやすい、接点をもてる人数が多くないなどのデメリットがある点に留意してください。

一方、オンラインは一度にアプローチできる顧客が多い点が魅力です。たとえば、メールやSNSなどを使えば、一度に大勢の顧客へスピーディーに情報を発信できます。また、細かいターゲティングが可能であるほか、効果検証と修正を容易に行えるのもメリットです。デメリットとしては、施策を運用するのに専門的な知識や技術が求められる点、接点から集客へ結びつけるための工夫が必要な点が挙げられます。

近年は、オンラインとオフラインを融合させたマーケティング手法も広がりつつあります。代表的なのは、O2OやOMOと呼ばれる手法です。前者は、Online to Offlineを意味し、オンラインで集客した顧客をオフラインの店舗へ送客する施策です。後者のOMOは、Online Merges with Offlineを意味し、オンラインとオフラインをシームレスに連携させる施策であり、モバイルオーダーやチャットボットなどが事例として知られています。

顧客接点が重要視されている理由

インターネットやモバイル端末の普及によって、顧客ニーズは多様化しました。また、同様に顧客接点も増加し、顧客の行動にも変化が見られます。

このような状況の変化に対応するため、企業は顧客接点の強化に努めなくてはなりません。顧客行動の変化を把握できておらず、従来通りの取り組みしかしていない状態では、顧客との接点をもてず業績の低下を招きます。

顧客接点を強化すれば、顧客満足度の向上にもつながります。たとえば、チャットボットやコンタクトセンターなどの顧客接点で、疑問や悩みをもつ顧客に適切な対応ができれば、顧客満足度が向上しリピーターになってくれるかもしれません。また、従来にはなかった新たなタッチポイントを創出すれば、これまで接点がなかった層に情報を届けられ、新規顧客の獲得にもつながります。

顧客接点を強化する効果

顧客接点の強化によって、どのような効果が得られるのかが気になる方も多いと思います。顧客接点強化の取り組みにより、顧客ニーズの把握や集客力の向上、顧客対応効率化、顧客満足度向上などの効果が期待できます。

顧客ニーズの把握

顧客接点の強化によって、顧客が何を求めているのかニーズを把握できます。企業が事業を通じて利益を得るには、顧客ニーズの把握が欠かせません。顧客が何を求めているのか、どうしてほしいのかが把握できていないと、的外れな商品やサービスを提供してしまい、まったく売れないといった状況にも陥りかねません。

顧客に商品やサービスを購入してもらうには、ニーズの把握が不可欠です。そのためには、顧客と接触する必要があります。顧客が何を求めているのかを知るには、顧客から直接聞くのが一番です。

たとえば、展示会やセミナーへ足を運んでもらい、そこでアンケート調査を実施するのはニーズの把握に有効です。また、ECサイトに口コミやレビューを投稿できるシステムを実装すれば、顧客のダイレクトな意見や要望を把握できます。

集客力の向上

企業が継続的に利益を得るには、集客力の向上が不可欠です。顧客接点を増加すれば、顧客に見つけてもらえる可能性が増えるため、集客力の向上につながります。

たとえば、TwitterやFacebookなどのアカウントを開設し、公式SNSとして運用するのは集客力アップに有効です。SNSではさまざまな情報を発信でき、大勢のユーザーに見てもらえるため、認知が高まりそこから集客につながる可能性があります。

また、オンラインで開催するウェビナーも集客力アップに有効です。参加人数が限られるオフラインのセミナーと違い、ウェビナーであれば全国から参加者を募れます。全国の方に自社商品やサービスの魅力を伝えられ、しかも物理的な会場などは必要ありません。低コストで商圏を広げられ、集客も強化できます。

顧客対応の効率化

顧客接点を強化すれば、さまざまな顧客情報を収集できます。収集した顧客情報を分析すれば、顧客の行動パターンなどを把握できるようになり、効率的な対応を行えます。

効率的に顧客対応ができる環境が整えば、生産性の向上が可能です。無駄のない効率的な業務遂行が可能となるため、限られた人員でこれまでと同等、もしくはそれ以上の成果が期待できます。

AIチャットボットやFAQなどを導入すれば、顧客は知りたい情報を自ら取得できるため、コンタクトセンターで働くオペレーターの負担軽減につながります。負担が少なくなった分、難易度の高い質問に対し、より丁寧な対応ができるようになるのもメリットです。

顧客満足度の向上

タッチポイントの増加と強化により、多くの顧客情報を収集できます。集約した情報を適切に管理・運用することで、顧客満足度の向上を狙えるのも顧客接点強化のメリットです。

取得した顧客情報を活用すれば、個々の顧客にマッチしたサービスを提供できます。たとえば、誕生日が近い顧客に対し、メールで割引クーポンを提供する、旧バージョンの商品を使っている顧客に新バージョンが発売されたことをDMで伝える、といった具合です。

顧客の属性や過去の行動情報に基づき、適切なアプローチを行える点が魅力です。過去に何度も足を運んでくれている顧客に対し、より手厚いサービスを提供することも可能となり、顧客満足度の向上が期待できます。

【動画】マーケティング担当者必見!スタートアップCEOと考えるCXの未来

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デジタル技術の進化と共に購買プロセスが大きく変化し、B2B・B2C に関わらず、購買者はあらゆるタッチポイントで一貫したサービスを求めるようになりました。この変化の激しい時代において求められる顧客体験とはどのようなものか?

本動画は、過去 SAP.iO のプログラムに参加し、当領域の最前線で活躍されているスタートアップ各社の CEO をお招きし、日本企業が目指すべき将来の CX のあり方などについてディスカッションした内容を収録しています。

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顧客接点を強化する方法

顧客接点を強化するのに有効なのは、新たな接点の創出です。また、オムニチャネル戦略の導入や顧客管理システムの活用も顧客接点強化につながります。

顧客接点を創出する

顧客接点が少ないと、新たな顧客と出会えるチャンスを逃します。たとえば、実店舗営業とチラシによる販促しかしていない企業の場合、店舗の存在を知っている人やチラシを見た人しか来店は期待できません。新たな顧客接点として、WebサイトやSNS、メルマガなども加えれば、より多くの人々に企業や店舗のことを知ってもらえ、新規顧客の獲得につながります。

これまで、オフライン中心のマーケティングを展開していたのなら、オンラインのタッチポイント創出を検討してみましょう。メルマガやSNS、Webサイトなどの運用が代表的です。また、ECサイトを開設、運用するのもおすすめです。

ECサイトを運用すれば、全国を商圏にできるため、ひとつの実店舗しか運営していなくても大幅な売上増が期待できます。

オムニチャネルの戦略を取り入れる

オムニチャネルとは、オフラインとオンラインの垣根をなくしたうえで、複数のタッチポイントを利用して販促につなげる戦略です。たとえば、SNSで商品について質問してきたユーザーに対し、Webサイトのリンクを送り、Webカタログから購入してもらったうえで最寄りの店舗で商品を受け渡す、といった具合です。

オムニチャネル戦略を導入するには、まずペルソナを設定しましょう。ペルソナ設定のプロセスを経ることで、強化すべき顧客接点が見えてきます。細かくペルソナを設定したあとは、カスタマージャーニーマップを作成します。

カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを見つけ、購入するまでのプロセスを可視化したものです。設定したペルソナをカスタマージャーニーマップへ落とし込み、顧客接点を整理していきましょう。

顧客管理システムを導入する

顧客接点強化の取り組みには、多くのリソースが求められます。限られたリソースを活用し、最大限の成果を得るには効率化が欠かせません。顧客情報を一元的に管理できるシステムを導入すれば、業務を効率化でき少ないリソースで取り組みを進められます。

顧客管理システムを導入すれば、あらゆる顧客情報の一元管理が可能です。顧客情報を1箇所に集約でき、オンラインで素早く共有できるのも魅力です。クラウドタイプのシステムであれば、導入から運用までの期間を短縮でき、導入コストも抑えられます。

顧客接点を強化する際の注意点

顧客接点を強化する取り組みには、時間と金銭的なコストがかかります。また、複数チャネルの顧客接点を運用するケースでは一貫性を保つほか、顧客情報の一元管理を徹底することも大切です。

時間的・経済的コストがかかる

顧客接点強化の取り組みを進めるにあたっては、相応の時間がかかります。たとえば、オムニチャネル戦略を進めるためのペルソナ設定やカスタマージャーニーマップの作成、顧客管理システムの選定などが必要であるため、多くの時間を要します。

中心になって取り組みを進めるための人材も欠かせません。顧客接点を増やし、適切に運用するとなれば専門人材も必要です。自社にいなければ外部から新たに採用しなくてはならず、採用コストが発生します。

顧客管理システムの導入にもコストがかかります。クラウドタイプのサービスであれば、初期費用がかからないものもありますが、多くの場合月額料金が発生することを忘れてはなりません。ランニングコストがかかるため、そのあたりも考慮しつつ選定を進める必要があります。

媒体ごとで一貫性を保つ

複数チャネルを運用するケースでは、すべての媒体で一貫性を保たなくてはなりません。チャネルごとにサービスの内容や品質にばらつきが生じると、顧客にネガティブな印象を与えるばかりか、クレームの発生や顧客満足度の低下にもつながります。

たとえば、SNS上でのやり取りではとても丁寧に対応してくれたのに、コンタクトセンターのオペレーターは言葉遣いや対応が悪かった、となると顧客心理が悪化します。また、店舗で購入した商品は手入れが行き届いていたものの、ECサイトから購入したものは汚れが酷かった、となると顧客の信頼を損ないます。

特定のチャネルの印象が悪くなることで、企業全体にネガティブな印象をもたれてしまうおそれもあるため注意が必要です。

顧客情報の一元管理を徹底する

顧客情報を一元管理できる環境・体制が構築されていないと、顧客接点の強化は実現できません。そのため、顧客接点を増やすだけでなく、各接点から取得した情報を一元管理できる環境や体制を構築することが先決です。

たとえば、ECサイトでの購入履歴や閲覧履歴と、実店舗への来店履歴、購入履歴などの情報がバラバラに管理されていたとしましょう。このケースでは、実店舗のスタッフは顧客がECサイトで何を購入したのか把握できないため、すでに購入済みのアイテムを提案したり、興味がない品を勧めたりといったことが起こり得ます。

顧客情報を一元管理していれば、上記のようなことが起こりません。実店舗のスタッフも、顧客がECサイトで何を購入したのかを把握できるため、情報に基づく適切な対応が可能です。

顧客接点の強化に取り組む企業事例

顧客接点の強化に取り組んでみたいものの、何から着手すればよいのか分からない、といった企業経営者や担当者も多いと考えられます。新たな試みに着手する際には、すでに取り組みを始めている企業の事例を参考にするのが得策です。事例を参考にしつつ、自社なりにアレンジしながら取り組みを進めてみましょう。

事例1. 自社アプリの活用で顧客接点を創出

食料品や雑貨、衣料品などを実店舗販売しているある企業は、アプリを活用した顧客接点の強化に成功しています。OMOのニーズを重視し、自社の顧客とよりスムーズなコミュニケーションを実現して集客の強化や売上の向上につなげる目的で自社アプリを開発しました。

同社のアプリは、魅力的なポイントプログラムを導入している点が特徴です。一般的な実店舗販売企業のアプリは、商品の購入やレジでの提示でポイントが貯まりますが、同社のアプリは開いたときにもポイントが貯まります。

顧客としては、アプリを開くだけでポイントが貯まるため、日常的にアプリを起動するようになり、企業との接点がより強まる仕組みです。 

事例2. オンライン接客による顧客コミュニケーション強化

ある老舗の百貨店グループは、オンライン接客による顧客とのコミュニケーション強化に努めました。同社がこうした取り組みを始めたきっかけは、新型コロナウイルスの世界的な流行です。新型コロナウイルスの感染が日本国内でも広がりを見せ、緊急事態宣言によって同社も営業を自粛せざるを得ない状況に追い込まれました。

コロナ禍により外出を控える人が増え、これまでのように対面で商品を提案、販売することも難しくなりました。そこで、同社は新たな顧客接点として、リモートショッピングが可能な独自アプリの開発に乗り出します。

リモートショッピングアプリが完成するまでは、ZoomやLINEを活用したオンライン接客サービスを展開していました。ただ、ZoomやLINEだけでは百貨店でのシームレスな買い物体験が難しいため、専用アプリの開発を急ピッチで進めます。

やがて完成したアプリは、シームレスな購買体験が可能なアプリとして高く評価を受けました。チャットを利用したテキストでのやり取りをはじめ、ビデオ通話や決済までアプリひとつで完結できるので、オンラインでありながら実際に店頭で買い物をしているような気分に顧客は浸れます。

同社がリリースしたリモートショッピングアプリは、思わぬ反響を呼びました。もともとは、コロナ禍で来店できない顧客のために開発されたアプリではあるものの、感染拡大が収まりつつある現在でも大勢の人がアプリを活用しているとのことです。

まとめ

顧客接点の強化によって、顧客ニーズの把握や顧客満足度の向上を実現できます。新たな顧客接点の創出やオムニチャネル戦略の導入などで、タッチポイント強化が可能なのです。取り組みを進めるにあたっては、コストを考慮する、媒体ごとの品質を担保するなどの注意点を押さえておきましょう。

顧客接点強化を実現したいのなら、「SAP Customer Experience ソリューション」が有効です。モバイルファーストの次世代コマースソリューションであり、顧客の興味や関心に基づく購買体験を提供できます。

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